
国宝 松に秋草図屏風 長谷川等伯筆 桃山時代 文禄元年(1592)頃 京都・智積院蔵(前期展示)
2020東京オリンピックに合わせて、日本の美を体現する文化芸術の振興、魅力の発信のための「日本博 / 紡ぐプロジェクト」の一環として、京都国立博物館で、特別展「京の国宝 ー 守り伝える日本のたから ー」が開かれています。いま改めて、日本の伝統、美を間近に再認識することができます。
国宝に叙する
日本には、国指定の美術工芸品として国宝897件、重要文化財10808件(令和3年3月現在。重要文化財には国宝を含む)があります。とりわけ、古の都、京都とその周辺にはそのおよそ1/6以上が伝えられています。
江戸から明治への混乱期、日本の文化財は、廃仏毀釈などで危機的な状況に陥ります。当時の新しい技術、写真によって、当時の様子が記録されています。

撮影鑑二 明治時代(19世紀) 京都府立京都学・歴彩館蔵(通期展示)
国宝と言っても、明治政府以降の人々の日々の努力・作業、地道な調査・修理によって、その美しい姿を見ることができています。 戦後、文化財保護の集大成として、文化財保護法が制定されるにいたります。

古社寺保存法御署名原本 明治時代 明治30年(1897) 国立公文書館蔵(通期展示)
国宝を愛でる
今展覧会では、戦後最初に指定された国宝が展示されています。平安時代の作「山水屏風」は、現存最古の山水屏風として、この時代唯一の唐絵の屏風として、日本絵画史上比類ないものです。

国宝 山水屏風 平安時代(11世紀)京都国立博物館蔵(前期展示)
有名な、雪舟の「天橋立図」は、雪舟の評価を高めた逸品です。そんな絵を明るい照明のもと、間近に見ることができる幸せを感じずにはおれません。

国宝 天橋立図 雪舟筆 室町時代(15~16世紀)京都国立博物館蔵(前期展示)
国宝を慈しむ
釈迦如来像は、衣の赤色が鮮やかで、世に「赤釈迦」の愛称で呼ばれることもあります。見事な赤にだけ目が行きますが、衣の上に重ねられた繊細な文様や光背に見るデリケートな文様などをチェックしてみてください。装飾品のような美しさです。

国宝 釈迦如来像(赤釈迦) 平安時代(12世紀)京都・神護寺蔵(前期展示)
「春日権現験記絵」は、宮内庁が管理する三の丸尚蔵館所蔵のため、文化財保護法の枠外でしたが、2021年7月16日、文化審議会が文部科学大臣に国宝に指定するよう答申しました。国宝に指定されたばかりの「春日権現験記絵」をじっくり眺めたいです。
国宝を伝える
国宝を今ある形で見ることができるのは、いままでのたゆまない努力と作業のおかげです。さらに、これからの世代に伝え、継承していく責務があります。新しい技術による修理によって、いったん指定を解除されたものが再指定されることは異例なこととはいえ、うれしいことでもあります。

重要文化財 四天王立像(食堂所在)腕・手首先 平安時代(9~10世紀)京都・東寺(教王護国寺)蔵(通期展示)
日本の文化財保護に大きな衝撃を与えた大きな事件に「法隆寺金堂火災」とならんで、「金閣寺全焼」があります。ここに残された金銅鳳凰は、破損がひどく、明治期に取り外されていたため、火災の難を免れました。数奇な運命ながら、その姿を今、見ることができるのは僥倖と言っていいかもしれません。

金銅鳳凰 室町時代(14世紀)京都・鹿苑寺蔵(7月24日~9月5日展示)
今展覧会も、他の展覧会の例にもれず、昨年の4月に京都市京セラ美術館で開かれることになっていましたがコロナの影響で、1年以上の時を経て、会場を京都国立博物館に移し、開催されることになりました。
その間、「文化財をどう守ってきたのか」という視点を加え、内容がさらに深まったものになったとのことです。大いに楽しみたいです。
[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2021年7月16日 ]
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