「絵とことば」がテーマのPLAY! MUSEUMでは、絵本作家・酒井駒子の企画展示が始まりました。本格的な個展としては、今回が初めてとなります。
展示は6つのエリアに分かれています。 会場に入ってまず目をひいたのが、杉材の展示ケースや壁と一体となった額です。
展示風景
森の中を散歩するようにあちらこちら歩いたり、立ったりしゃがんだりしながら、耳をすますように絵とことばを体験していきます。
本展では、約200点の原画が展示されています。その中には、ブラスチバ世界絵本原画展で金牌を受賞した『金曜日の砂糖ちゃん』(偕成社)をはじめ、国内外の受賞作が多数含まれています。
『金曜日の砂糖ちゃん』原画(偕成社、2003年)
『ロンパーちゃんとふうせん』原画(白泉社、2003年)
絵の中で黒色が象徴的に使われているイメージですが、黒い下塗りの上に描く画風は『ぼく おかあさんのこと…』(文溪堂)から定着したとのこと。
『ぼく おかあさんのこと…』原画(文溪堂、2000年)
黒色の下地が透けて見えることで、かえって銅版画のメゾチントのような静謐さをプラスしているように感じました。
『ビロードのうさぎ』原画(ブロンズ社、2007年)
今とは対照的に、デビュー作『リコちゃんのおうち』(偕成社)では、童画のような明るいタッチだったことに驚きました。
『リコちゃんのおうち』原画(偕成社、1998年)
また、建築家・2m26が手掛けた会場デザインも特徴的です。 3つの見開きページが繰り返される『まばたき』(岩崎書店)の展示では、本と同じような鑑賞の機会を作りたいと思ったそうで、1枚1枚を独立して見られるよう配置されていました。
『まばたき』原画(岩崎書店、2014年)
そして、会場の奥へ進むほど木と椅子が増えていきました。テーブルにも原画が埋め込まれています。
会場風景
最後のエリアには『よるくま』、『よるくまクリスマスまえのよる』(偕成社)が展示されています。
『よるくま』原画(偕成社、1999年)
こちらの部屋には、写真左上に見えている黒い布と布の間から入ります。座って鑑賞しては立ち、隣の椅子に移動してまた座るという非日常的な動きが、作品とゆっくり向き合う時間になりました。
絵本の原画には、制約された文字数を補い、イメージを膨らませるような役割もあるかと思います。ひとつひとつの作品が、ずっと見ていたいほど詩情にあふれていました。
[ 取材・撮影・文:新井幸代 / 2021年4月9日 ]
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