※緊急事態宣言の発出に伴い、臨時休館中。
※5/15(土)~再開予定
55周年を迎える山種美術館の記念展覧会が開催されています。季節毎に華やぐ花は、日本人の心を魅了し、絵画の題材として画家たちが描いてきました。名だたる画家による花の絵画、画家の個性が表れる花の数々をご覧下さい。

白花の表現に注目
構成は「第1章 春から夏、咲き誇る花々」「第2章 花のユートピア」「第3章 秋と冬の彩り、再び春へ」です。

会場風景 1章 2章
見どころの一つとして「個性豊かな花の表現」があげられています。それぞれの画家が、独自に表現する百花繚乱の花々。鮮やかな色彩であふれる中、あえて「白」に注目し、日本画の「白花」が、いかに描かれたかを追ってみます。
青花の中の白
メインビジュアルの川端龍子の作品です。尾形光琳の燕子花を思い出されます。光琳の燕子花はすべて青。龍子の屏風は、点在する白花が目を引きます。特に青が密集した左隻の白花は自ら輝き、青花も引き立てているようです。

川端龍子《八ツ橋》1945(昭和20)年 絹本金地・彩色 山種美術館
白花を見ていくと、花びらにうっすら青みが入ったものや、ひっそり蕾が影に隠れたもの。

川端龍子《八ツ橋》1945(昭和20)年 絹本金地・彩色 山種美術館 (部分)
粗いタッチの花もあり、それぞれが個性的。また青花の中央の白い筋は燕子花の特徴です。ガクの上の白い部分とともに、白い燕子花と呼応し調和しているようです。
百花の中の白花
国に命じられ百種の花卉図を制作するために描いた植物図鑑的な作品。濃厚な色彩で濃密に描かれています。その中から白花だけを取り出し観察してみると、描写の多彩さに驚かされます。

田能村直入《百花》(部分) 1869(明治2)年 絹本・彩色 山種美術館
丸い房状の花は平面的に描かれていますが、縁がカールした花びらは、胡粉を重ね厚みがあります。また、花びらの脈を緻密にびっしりと描いた細密描写もあれば、一見、簡略に見える花びらも… しかし、近寄ると繊細な胡粉使いで表情豊かです。白花の描き方だけでも百花繚乱です。

田能村直入《百花》(部分) 1869(明治2)年 絹本・彩色 山種美術館(部分)
現代日本画の白花
タイトルの「華鬘」とは、仏前を荘厳にするために仏堂に掛ける装飾のことです。現代作家、西田俊英氏がガンジス川のほとりで一体の亡骸が、たくさんの花とともに荼毘に付されるのを見て描きました。29歳の時です。

西田俊英《華鬘》 1983年(昭和58年)紙本・彩色 山種美術館
中央のユリに目が引き付けられ、それを取り囲む白い花に視線が導かれます。描かれた花のテクスチャーと、花を覆うレイヤーが幻想的です。

西田俊英《華鬘》 1983年(昭和58年)紙本・彩色 山種美術館(部分)
その一方で、現代の新たな表現を生み出そうと挑戦するエネルギーも伝わってきます。格闘してもがく若き力がみなぎっているようです。
これらの表現はどのように生み出されたのでしょうか? オンラインによる生中継で、画家のアトリエから、制作秘話や技法、画材が紹介されました。
大型作品だけでなくシンプルな作品の小花も魅力的。花弁が透けて奥の枝が見える透明感に対し、ぽってりした厚みのある梅の花。外隈で描いた月とともに、小さな画面の中で、遠近の深さに広がりを与えていると思いました。

橋本関雪《白梅に月》1918-19(大正7-8)年頃 紙本・彩色 山種美術館
ぜひ美術館で体験していただきたいところですが、ギャラリートークも企画されています。花色を決めて鑑賞するのも面白そうです。
[ 取材・撮影・文:コロコロ / 2021年4月16日 ]
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