《4つの黄色い縦のコンポジション》 2017-19年
独特な世界観で、インスタレーション作品を制作しているマーク・マンダース。昨秋、金沢21世紀美術館で開催された2人展 「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース ダブル・サイレンス」 はまだ記憶に新しいですが、国内の美術館では初めてとなる個展が東京都現代美術館で開催中です。
東京都現代美術館 入口の野外彫刻 《2つの動かない頭部》2015-16年
ベルギーを中心に活動しているマーク・マンダース。彫刻や言葉、家具など様々なオブジェを組み合わせて、インスタレーションを制作。巨大な人物の彫刻をはじめ、一目みたら忘れられないインパクトがあります。
《未焼成の土の頭部》 2011-2014年
金沢21世紀美術館での展示作品15点もあわせ、33点の作品が紹介されている本展。全体を“1つの作品”として構成し、1つの文章(=センテンス)をイメージ。作品どうしが対話出来る空間となっています。
《夜の庭の光景》2005年 ゲント市立現代美術館蔵
細部まで工夫がほどこされているのも展覧会のポイント。《マインド・スタディ》の後ろの壁に展示されているのは《短く悲しい思考》。真鍮が吊るされた釘は、マンダース本人の目の高さに合わせて設置されたもの。2つの釘の距離も、目のあいだの距離にあわせており、マンダースの目線を体感できます。
《マインド・スタディ》2010-11年 ボンネファンテン美術館蔵
マンダースがよく使う言葉に“テンション”があります。これは、大きさの異なる作品を組み合わせることで、親密さと力強さが感じられるためだそうです。作品だけでなく、後ろを覆ったビニールの存在は、作品自体の脆さも表現しています。
《乾いた土の頭部》2015-16年
制作の瞬間や未完成によって次に何かが起きる感じが大好きだというマンダースは、自分の作品を集めると、ひとつの大きな静けさになると考えています。
手前《リビングルームの光景》2008-16年 / 《パースペクティブ・スタディ》2014-16年 東京都現代美術館蔵
普段の展示で意識していることは、部屋毎に異なる音を奏でた空間にすること。しかし今回の展示では、1つの空間であることを意識し、作品と作品の距離も緻密に練られています。いくつかルートをもうけているため、自由に動き、様々な角度から作品を楽しむことができます。
《舞台のアンドロイド(88%に縮小)》2002-14年
廊下には、1990年から現在に至るまでのスケッチがずらりと並んでいます。洗濯バサミでとめているのは、マンダースの制作スタジオで実際に行っている様子を再現。作家の頭の中を覗ける様な、興味深い空間です。
《ドローイングの廊下》1990-2021年
マンダースは、30年以上にわたり「建物としての自画像」という構想に沿って制作を続けています。その構想とは、「マーク・マンダース」という架空の芸術家の自画像を想像の「建物」の枠組みを用いて構築するというものです。想像のため、フロアプランも自由な発想で自在に練られています。
これまでの作品を集めて展示した最後のエリアでは、マンダースの好きなものが好きなように配置されているように感じられます。
手前《完了した文》2003-20年
新型コロナウイルス感染防止のため、来日は叶わなかったマンダース。オンラインに登場したマンダースは、「東京で初めての個展ができることは非常に嬉しく思っている。また、リモートでの展示だったが、思った通りのものができたので是非、一度足を運んで欲しい。」と語っていました。
リモート出演したマーク・マンダース
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 / 2021年3月19日 ]