白川公園入口の看板
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」展が、名古屋市美術館で始まりました。本展は、2020年7月に福岡からスタートした全国巡回展です。
バルビゾン派の作家や、カミーユ・コロー、ウジェーヌ・ブーダンを中心に約80点の作品が展示されています。
会場入口のフォトスポット
名古屋市美術館では、2017年にも「ランス美術館展」が開催されたので、「ランス」という言葉に、聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。ちなみに、ランスには、有名なノートルダム大聖堂があり、シャンパンの産地としても有名です。
展覧会の見どころ
展示風景 第I章 コローと19世紀風景画の先駆者たち
展覧会タイトルにもある通り、本展のテーマは「風景画のはじまり」です。ですから、会場には19世紀フランスの各地を描いた風景画が並んでいます。地下の展示室で開催中の「アートとめぐる はるの旅」との直接的な関連はないそうですが、両展覧会をあわせると、より色々な場所を旅できた気分になります。
展示風景 第I章 コローと19世紀風景画の先駆者たち
18世紀以前の絵画にも風景は描かれていますが、神話や宗教の物語を描く「歴史画」の背景にすぎませんでした。当時の絵画はアトリエで制作されるのが当たり前でしたが、風景画の人気が高まると画家たちは、屋外にキャンバスを持ち出し、実際の風景を見ながら制作するようになります。
展示風景 第Ⅲ章 画家=版画家の誕生
当時の絵の具やパレットなどの資料も展示されています。チューブ入り絵の具の普及によって画家たちは戸外で制作しやすくなったそうです。 パレットに残った絵の具を見て、このパレットの持ち主は、どんな絵をかいていたのかなと思いました。
展示風景 第Ⅳ章 ウジェーヌ・ブーダン
ボルドー色の背景の中に展示されているのは、ブーダンの≪水飲み場の牛の群れ≫です。 牛たちはのんびりとした様子で、水辺に集まっていますが、左側の空を見ると、雲行きが怪しくて、今にも雨が降りそうです。静と動の雰囲気のギャップが面白いと思います。
展示風景 第Ⅴ章 印象主義の展開
右端の作品は、モネの≪ベリールの岩礁≫です。海面に空が写っていて、その部分に薄くピンクがぬり重ねられ、紫色にも見えます。夕焼けの色なのか、大胆な色遣いに思えました。
ちなみに、モネに屋外での制作を勧めたのは、ブーダンだそうです。様々な天候や時間帯の色々な空の表情を描いた流れの先に、≪睡蓮≫の連作が生まれたのだなと思いました。
最後に、本展の担当者から「現在は気軽に遠くへ出かけることができない状況ですが、19世紀フランスの画家たちの目を通して、当時の光や空気感を味わい、少しでも開放的な気分になっていただけたらと思います」とのメッセージがありました。
なお、展示室内の写真は、特別に許可を得て撮影したものです。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2021年3月27日 ]
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