美術館入口
豊田市美術館で「ボイス+パレルモ」展が始まりました。 今展には、ボイスの代表作の《ユーラシアの杖》やパフォーマンスの映像、パレルモの「布絵画」、「金属絵画」など、約130点の作品が展示されています。
ヨーゼフ・ボイスは、現代美術の中でも特に重要なドイツの作家です。 最近では、映画「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」(日本公開は2019年)が制作されるなど、世界的に人気があります。
一方、ブリンキー・パレルモは、ボイスの一番弟子といわれる作家ですが、わずか33歳で他界したため、あまり知られていません。とはいえ、かのゲルハルト・リヒターとも親交があったそうなので、初見を楽しみにしていました。
展覧会の見どころ
展覧会ポスター
ボイスといえば、帽子とベストがトレードマークで、刺激的なパフォーマンスを数多く行いました。作家というより社会活動家というイメージが強く、さて作品はというと、豊田市美術館のコレクションくらいしか思い浮かぶものがありません。
展示風景
ボイスの作品は、一般的な絵画や彫刻とは、かなり異なります。例えば、《ユーラシアの杖》は、作品だけ見るとフエルトで覆われた長い柱です。ボイスの代表作といわれても、ピンときませんが、近くに展示されている映像を見ると、納得できるものがあります。
もっとも、子供にとっては、かなり興味を引くようで、大人より熱心に作品に向き合っていました。
展示風景
隣の展示室には、パレルモが並んでいます。ボイス同様、絵画や彫刻というより、もっと物質に近い印象で、パレットや木の棒に見える作品を前に、困惑しながら進みました。
展示風景
《フエルトスーツ》がずいぶん高い位置に展示されています。視界に入らないわけではないでしょうが、右手の絵画作品のほうに足を止める観客が多いようでした。額に入った絵画のほうが、作品として認識しやすいからでしょうか。
展示風景
奥に見える青と緑の作品がとてもきれいでした。
とはいえ、このあたりに来ると、どうも日本の美術館にいるような気がしません。現代美術のギャラリーか、はたまた外国の現代美術館にいるような先鋭さを感じます。
展示室風景
このあたりの展示は、とても面白いものでした。ボイスとパレルモ、2人の作家の相互作用が作品に表れ、今までに見てきた作家ごとの特徴が、相手の作品に表れます。
別の言い方をすれば、作品を見ただけでは、ボイスの作品か、パレルモの作品か、わからなくなりました。
展示風景
左側の、はっきりとした色彩の作品は、パレルモの《コニーアイランドⅡ》です。 数名のお客様に聞いたところ、今展の作品の中で一番気に入ったという方もいました。 おしゃれなインテリアのようで、サイズも手ごろなので、居間などに置きたいということかもしれません。
ボイスの大作や映像作品があり、パレルモの良さもわかる、とても充実した展覧会でした。
同時開催されているコレクション展には、パレルモと親交のあったイミ・クネーベルや、ウルリッヒ・リュックリウムも展示されています。「ボイス+パレルモ」展の後で見るからこそ、いろいろ発見できることがあると思います。 こちらもお見逃しなく。
本展覧会は、埼玉県立近代美術館と国立国際美術館と3館での巡回企画展です。今後の予定は、こちら
なお、展示室内の写真は、特別に許可を得て撮影したものです。画像の掲載は2022年1月16日(日)まで。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2021年4月3日 ]
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
→ 詳しくはこちらまで