会場入口
大阪・中之島香雪美術館では「源氏物語の絵画 —伝土佐光信『源氏系図』をめぐって」が開催中です。源氏物語と聞いただけで、優美な世界に浸ることができます。
本展では、香雪美術館所蔵する新出の「源氏系図」と、土佐光信が表紙を描いたとされる「源氏物語五十四帖」との深い関りを紹介するとともに、源氏絵が描かれた屏風や扇面などが展示されています。
源氏系図 表紙:伝-土佐光信(室町時代 16世紀)香雪美術館
今回、初めて「源氏系図」というものを知りました。源氏系図とは、作中の登場人物を系図で表した本、今でいうならハンドブックというべきでしょうか。
こういった参考書的なものを昔の人も使って読んでいたとは、興味深いです。「なるほどね~。」なんて源氏系図でチェックしつつ、源氏物語を読みふけっていた姫がいたかもしれない……なんて想像しすぎでしょうか。
土佐光起 紫式部観月図(江戸時代 17世紀)滋賀・石山寺
展示室で最初に迎えてくれるのは、《紫式部観月図》。滋賀県の石山寺の一室で、紫式部が源氏物語の構想を練ったと伝えられており、琵琶湖に映る十五夜の月を眺める彼女の姿が描かれています。
こんな場面をモチーフにするなんて、いかに源氏物語が多くの人々に愛され、かつ日本文化に影響を与えたのかが感じられます。《紫式部観月図》の中の式部はどんな情景を思い浮かべているのかと、ロマンが溢れます。
展示風景
展示風景
展示品が纏う上品な雰囲気は、会場にも漂います。源氏物語の場面が描かれた作品はどれも美しいの一言。
《源氏物語花宴図》や《源氏物語 花宴・須磨図》など、繊細で丁寧な描き込みに感心します。これが土佐派の画風なのでしょうか。この絵を前にした当時の人たちは感嘆の声を上げたにちがいありません。
平安中期から各時代を経て現在に至るまで、人々が1つの小説に同じ想いを寄せるとは、まさに奇跡といえます。 と感激している本人は、漫画でしか源氏物語を知らないというお粗末さ。この機会に読んでみます。
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2021年1月29日 ]
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