「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989–2019」展示風景
今年最も注目すべき展覧会の1つ「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989-2019」が京都市京セラ美術館で開幕しました。
本展は、美術評論家の椹木野衣を監修に迎え、独自の視点で選定した作家たちによる集合的活動にフォーカスした「平成」の美術を振り返ります。
平成の30年間を、歴史的な出来事をポイントに3期⦅第1期:1989年~2001年(ベルリンの壁崩壊、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件)、第2期:2001年~2011年(アメリカ同時多発テロ事件やリーマンショック)、第3期:2011年~平成が終わるまで(東日本大震災や自然災害の多発)⦆に区分し、作品を紹介しています。
「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989–2019」展示風景 年表「平成の壁」
入口には幅約15メートルにもなる「平成の壁」がそびえます。平成時代の社会、そして美術界の動きが手書きされていて、これを見るだけでも満足できるぐらいのボリュームです。奥に広がる展示会場へのウォーミングアップにもなります。

「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)1989–2019」展示風景 パープルーム《花粉の王国》2020
村上隆率いるカイカイキキが主催した大規模プロジェクト「GEISAI」、1990年代以降活動を展開してきた匿名ユニット「IDEAL COPY」、社会と結びついた美術の実践を通して様々な問いを発信し続ける「Chim↑Pom」、梅津庸一が立ち上げた「パープルーム」、日本画に対して東北画という名付けは可能か?という問いをもとに美術史を模索するプロジェクト「東北画は可能か?」など、14の作家グループによる作品と1作家グループの資料を、自由に好きな順で見て回れるようになっています。自然と、平成(過去)を振り返る自分がいます。
今いる令和の「点」を遡り、平成という「線」が美術を通して巨大な「面」に化け、呑みこまれてしまいそうです。平成に起きた災害、テロなどで気持ちが揺れたあの時を思い出します。私にだけ起こったことではなく、ここで作品をみている人たちも、そしてこれらの作品を作った作家たちも、あの時を通過したということを強く意識させられました。
一体感が生まれたという感覚ではありません。しかし私は社会の中で生きているのだと感じずにはいられませんでした。

ガタロ《雑巾の譜》2018-2020 《Gataro, A Janitor Artist》(映像資料)2020 2点とも櫛野展正氏蔵
気づけば、作品は、平成を映すだけのものではなくなっていました。
それらは、よりパワフルに、より濃度のあるメッセージを発しています。コロナ禍で不安が蔓延している状況下が、作品に新しい意味を帯びさせていくようです。美術の根っこを見た気がします。平成生まれの美術は、ムクムクと私の前で膨れ上がっていくのでした。

IDEAL COPY《Channel : Peace Cards》 1920/2020
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2021年1月22日 ]
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