一度みただけでハッピーな気持ちになれるもの……あなたは、何を思い浮かべますか。
答えの一つに三沢厚彦のANIMALSシリーズがあるかもしれません。日本の現代木彫を代表する三沢厚彦の展覧会が、現在あべのハルカス美術館で開催中です。
展示風景
クリッと見開いた眼、ポップな印象の彩色、「かわいい」動物たちを間近に見ると、動物の毛並みのようにも見える作品の表面に気づきます。
なんとなく見ていた作品が急にグッと迫ってきます。ザッ、ザッと音が聞こえてくるような鑿痕からは、三沢が実際にそれに向き合った思いや、費やした労力、時間などが溢れています。
材料の木のずっしり感も加わり、「かわいい」が「強さ」に変化していきます。
展示風景
会場には、ウサギやリスなどの小動物から象、ライオンまで、様々な動物が私たちを迎えてくれます。見上げると手長猿やコウモリもいます。作品を追うと自然に視線が大きく動き、次の部屋へと促されます。
展覧会場ではめずらしく自然光の入る部屋もあり、16階にあるという同館の特徴を感じながら作品を楽しむこともできます。
ふと見ると、窓の外には一匹のクマ!

《Animals2009-02B》2009 ブロンズ、塗装、油彩
意外な場所に展示された作品を見ていると、室内にいる私こそが見られているような気持ちになっていきました。
まるで作品である動物たちに「ようこそ!」と話しかけれ、彼らの世界にお邪魔させてもらっているかのよう。いつの時も、展覧会では、鑑賞する私自身を主として、展示物を見ていました。
それが普通というより、今まで自分と展示物の関係なんて、全く考えこともありませんでした。改めて、自分と「もの」との関係を考えてみよう。新しい扉を少し開けたような気分です。

《Anima2020-3》2020 檜、油彩
会場の最後には、最新作《Anima2020-3》キメラが待っていました。
1つのボディにライオン、ヘビ、大きな羽と色々なものが共存しています。最近よく耳にする「多様性」。自然とその言葉が浮かびます。視線があうことのないキメラは、静かに遠く先を見ているようです。未来を感じているのでしょうか。
ゆっくりとキメラの周りを歩いてみました。背中に新たな生物を発見します。
それは……、ぜひ会場で確認してください。動物たちも私たちと一緒に今を生き、そして前に進もうとしています。

展示風景 初期の作品から最新作までが並びます。
[ 取材・撮影・文:カワタユカリ / 2020年11月20日 ]
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