大竹伸朗(東京・1955年−)は、1980年代初頭に新しいペインティングの旗手として鮮烈なデビューを飾って以来、質・量ともに比類ない作品を生み出し続けるとともに、写真、本、印刷物、音などの表現手段を取り込み、多彩な活動を展開してきました。また、異分野のアーティストとの協働を通じた旺盛な制作活動でも知られており、彼の影響力は、現代美術の世界にとどまらず、写真、デザイン、文学、音楽など、世代を超えてあらゆるジャンルに及んでいます。
2006年には東京都現代美術館において大回顧展「全景」を開催し、少年時代のスケッチから新作まで2000点を超える膨大な作品群で大竹伸朗の全貌を紹介するものでした。また、2012年6月には、5年に1度ドイツ・カッセルで行われる世界最大級の国際展「ドクメンタ」に日本人として唯一招聘を受け参加しています。ここで展示された作品《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》は、国内外のアートシーンに大きな衝撃を与え、訪れた観客の好評を博しました。
本展は、宇和島へ移住して25年を経て新しい局面を迎えつつある「大竹伸朗の現在」に焦点を当てており、大竹にとって久々の大規模な新作展となります。カッセルの森から美術館へと移して新たに展示される《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》をはじめ、当館の建築や展示空間を最大限に活かしたインスタレーションや鉄製の巨大な彫刻、そして絵画や平面作品等、新作及び未発表作を中心に構成する本展は、大竹伸朗の今後の展開を予感させる展覧会となることでしょう。
また、本展は高松市美術館で行われる「大竹伸朗展 憶速」とも連動し、その会期中(2013年7月17日−9月1日)にかけては、香川県内2つの美術館で2つの異なるタイプの大竹伸朗展をご覧いただける貴重な機会となります。