生誕110年　小磯良平の世界

神戸市出身の小磯良平(1903-1988)は、日本近代洋画界を代表する画家の一人です。本年は、小磯良平の生誕110年を迎える年にあたり、これを記念する小磯良平の回顧展を開催することとなりました。 幼い頃より絵を描くことに関心を示した小磯良平は、東京美術学校で油彩画を学び、優れた成績を修めて卒業します。その才能は、在学中に帝展に出品した《T嬢の像》が特選の栄誉に輝いた時から広く注目を集めていました。小磯は、美術学校を卒業した翌年の昭和3年から昭和5年にかけてヨーロッパに遊学し、西洋絵画を実見して多くを学んで帰国、その後およそ60年間の制作活動の中、西洋絵画の伝統を常に意識しながら様々な表現の可能性を追及しました。とくに太平洋戦争直前の昭和16年10月、第4回新文展に出品された《斉唱》は、平和を望んでいた小磯の祈りが表現されたものとして、最も多くの人々に親しまれている作品です。 人物画を得意としていた小磯ですが、静物や風景画にも穏やかで洗練された独自の世界を創り出し、挿絵や版画などの分野においてもまた人々を魅了してきました。 生誕110年を迎えて、代表的な油彩作品をはじめ素描や版画、挿絵等を一堂に集め、小磯良平の画業をご紹介いたします。