印象派の画家クロード・モネは、1883年、42歳の頃より、パリから約80キロほど北西に位置するセーヌ川沿いの小村ジヴェルニーに住み、近隣の風景を描いて名声を得てゆきました。当時のジヴェルニーは、300人ほどが暮らす典型的なフランスの農村でしたが、セーヌ川とその流れが生み出した丘陵とが四季それぞれに穏やかな光景を展開させていました。この村はもちろんモネが描いた睡蓮、積みわら、ポプラ並木などの作品によって世界に広く知られることとなったのですが、モネの友人であるボナールのみならず、1915年頃までには、日本の児島虎次郎をはじめ、19カ国を超す、300人以上もの芸術家がここを訪れています。
格別、印象派の作品を早くから受け入れていたアメリカの画家たちは訪問者の70%をしめていたばかりか、ここに住んで制作した画家の数も多いときには50人を超すほどで、ここはさながらアーティストのコロニーの観を呈していたのです。アーティストの共同体には夢があります。それは、互いに分かち合える共通の価値をそこから汲み上げながら、この普遍性のなかに各自の個性を確立するという芸術の理想の夢なのです。
今回の展覧会では、モネの作品を初め、彼の義理の娘ブランシュの作品、そしてこの芸術家村で制作したことでアメリカの印象派を形成するにいたる多くのアメリカ人画家の作品に焦点をあてつつ、ひとつの理想郷ではぐくまれた、風景と人々の生活の姿をテラ・アメリカ美術基金の全面的な協力のもと、約75点で示します。