第27回土門拳賞受賞作品展「土田ヒロミのニッポン」

　さらなる進化への勇気に（土門拳賞受賞の言葉） 　ありがとうございました。私は既に後進に道を譲るべき年になっておりますが、大変な名誉、うれしく拝受させていただきました。 　受賞対象は、東京都写真美術館での写真展「土田ヒロミのニッポン」。私が本格的に写真を始めた60年末から現在まで、日本と日本人の有り様を記録してきた幾つかのシリーズを時系列的に展示したものです。シリーズごとに作品の表現形式が異なり、発表の時々には、誤解を受けることも有ったように記憶します。 　しかし、このような権威ある賞を拝受し、自分の作業に大きな誤謬のなかったおとを確信し得たこと、さらなる進化への勇気をちょうだいできましたことにこの上ない喜びを感じております。 　1979年、私は雑誌の仕事で、土門拳先生を撮らせていただく機会がありました。極度に緊張する私を好々爺の面立ちで迎えてくださった記憶がよみがえります。土門拳の「ヒロシマ」が無ければ、私はヒロシマに向かうことは無かったのでは、「古寺巡礼」が無ければ「続・俗神」も無かったのではないか。先陣の力を借りて、ようやくここに至ることができたのだという思いを深くしています。