英一蝶は、狩野派に学んだ元禄時代の絵師のひとりですが、古典を重視する狩野派から離れ、エネルギッシュな江戸の町人文化に親しみ、生き生きとした作品を描きました。絵を描く傍ら俳諧をたしなみ、旗本や豪商とつきあいを深め、さらに遊郭に出入りするなど一連の派手なふるまいが目に余り、1698年、一蝶46歳のときに幕府によって三宅島へ遠投の刑に処されます。一蝶の罪については諸説ありますが、将軍綱吉の逝去による大赦で江戸に帰るまで実に11年余りの歳月を三宅島で過ごしました。三宅島時代に乏しい絵の具で描かれた作品はのちに「島一蝶」と呼ばれるようになります。
今回、特別展示される「布晒舞図」も「島一蝶」の作品のひとつ、1年にほんのわずかの期間だけ公開される遠山記念館の至宝です。
1700年頃に描かれた「布晒舞図」は、左手に持った白い布が地面に着かないように、リズミカルに舞う様子を描いた傑作です。三味線と鼓の音と歌にあわせて軽快に踊る、踊り子の艶やかな姿態を描きます。じっとみつめていると囃子方の音や風を切る晒し布の音が聞こえてくるような、そして寂寞とした三宅島にあって江戸の華やぎに思いをはせる一蝶の姿が見えるような、存在感のある「布晒舞図」をこの機会に是非ご覧ください。