ドレスデンはドイツ最東部にあり、ザクセン公国の首都として、アウグスト強王(フリードリヒ・アウグスト1世)の時代(在位1694-1733)に黄金期を迎えた美しいバロックの街です。アウグスト強王が中心となり収集した東洋陶磁2万5000点、武具1万点、宝飾品3000点、絵画3000点という壮大なスケールの美術品は、何よりも宮殿を飾り、王の偉大な権力を誇示するためのものでした。
本展はこうしたヨーロッパの宮廷美術のあり方を、12部門からなるドレスデン国立美術館の9つの美術館から、絵画、宝飾品、衣装、家具、工芸品など多彩なジャンルの約200点で紹介する画期的な展覧会です。
ドレスデンの宮廷コレクションは、東西の文化の十字路として国際交流によってもたらされた品々に代表されます。そこで、本展は16世紀の「美術収集室(クンストカンマー)」から、オスマン帝国、イタリア、フランス、東アジア、オランダ、19世紀のドイツ・ロマン主義までの国際色豊かな7章で構成。なかでも王のダイヤモンド装身具、フェルメールの「窓辺で手紙を読む若い女」、レンブラントの「ガニュメデスの誘拐」、日本の伊万里焼とマイセン磁器など、質の高い作品が一堂に会します。
ワーグナー、ゲーテ、森鴎外など多くの芸術家を魅了してきたドレスデンは、常に東西各国の多彩な芸術文化を取り入れながら、マイセン磁器やロマン主義絵画など新たな文化を世界へ発信しており、「世界の鏡」としての役割をもった都市でした。また第二次大戦時の空爆や近年の洪水という惨事を乗り越え、昨年はユネスコ世界文化遺産にも登録されました。2006年に建都800年を迎えるドイツ屈指の芸術都市から、ザクセン宮廷の至宝コレクションの全貌を、はじめて日本でご紹介します。