入江は1935(昭和10)年に現在の日光市に生まれました。少年時代から美術に関心を示し、1953(昭和28)年に東京藝術大学美術学部芸術学科に入学、在学中の1956(昭和31)年には春陽会展に初出品で入選をはたしています。この、春陽会の創立には同郷の先輩画家・小杉放菴(こすぎ・ほうあん:1881-1964)が深くかかわっていました。
1962(昭和37)年、フランス政府給費留学生として渡仏、フランス国立高等美術学校においてモーリス・ブリアンション(1899-1979)に師事しました。足掛け三年の在仏中、セザンヌの作品と向きあうために印象派美術館に足繁く通う一方、サロン・ドートンヌに出品。またヨーロッパ各地を旅行しています。
帰国した1964(昭和39)年の第41回春陽会展に滞欧作5点が入選、同会の絵画部会員に推挙され、以降現在まで同展への出品を続けています。また、同年6月には女子美術大学に非常勤講師として就職、12月には当時具象画家の登竜門的な存在であった安井賞候補新人展に選ばれて出品しています。
1967(昭和42)年に、勤務していた女子美術大学が茅ヶ崎校舎を開校、入江は女子美術短期大学専任講師となって市内甘沼の教員宿舎に転居します。こののち、彼の描くモチーフに海辺の風景が加わることになります。その後、1976(昭和51)年には市内東海岸南に住居・アトリエを新築移転、現在にいたっています。
また、春陽会の長老画家・中川一政(なかがわ・かずまさ:1893-1991)との交流が深まったのも1976(昭和51)年頃からのことでした。中川の勧めで版画制作を始めたことがきっかけとなり、中川の東洋美術などにかんする造詣に触れるばかりではなく、共に国内外を旅行するなどして薫陶を受けました。
入江は毎年の春陽会展への出品のほか、国際形象展への招待出品や個展やグループ展での旺盛な作品発表を続けています。これらの出品作品にたいしては、日本秀作美術展への4回の選抜出品(1995~97,2003)や、1996(平成8)年の第14回宮本三郎記念賞の受賞というかたちで評価が与えられています。
また、女子美術短期大学部長や社団法人 春陽会の理事長等を歴任し後進の指導にあたる一方、現在は女子美術大学付属高等学校・中学校校長として美術教育の場でも力を尽しています。
本展は、入江観の初期から最近作までの約55点を展覧し、その画業の全体像�紹介するものです。