『美女と野獣』よりウォルター・クレイン 1874年刊 木口木版
町田市立国際版画美術館木口木版は18世紀後半のヨーロッパで生まれた技法で、柘植や椿などの目の詰んだ木を輪切りにした版木を用います。堅い版木に鋭い刃物で線を彫り込むため、その緻密な線はむしろ銅版画を思わせます。凸版である活字と一緒に刷れることから、書籍の挿絵として発展していきました。19世紀中頃のイギリスで多色刷り木口木版を実用化したのがエドモンド・エヴァンス(1826-1905)です。刻線の向きや密度、版の刷り重ねを工夫することで、実際に使っているインクよりも多くの色が使われているように見せています。エヴァンスが見出したクレイン、ランドルフ・コルデコット、そしてケート・グリーナウェイらの原画による美しい色彩の絵本は人気を博し、イギリス・ヴィクトリア朝時代の絵本の黄金期が築かれました。
担当者からのコメント:ディズニー映画でおなじみの「野獣」とはかけ離れた、イノシシのような姿はインパクト大!「美女」の横顔の美しさが際立っています。見た目の醜さにもかかわらず、優しい心と楽しい話術の持ち主である「野獣」に「美女」は惹かれていくのです。
多色刷による鮮やかな色彩が目を引き、浮世絵からも影響を受けたという黒の輪郭線が画面を引き締めています。当館の収蔵品のなかでも人気の高い作品です!