黄褐釉猪(おうかつゆういのしし)中国・唐時代(8世紀)
山口県立萩美術館・浦上記念館垂れさがった耳、ドングリに似た上目づかいの眼、歯を喰いしばった口と、一見アンバランスな要素で構成されているようで、全体として見ると調和のとれた妙に愛嬌のある顔立ちをした猪の陶像です。
中国では『猪』とは家畜化された豚を指しますが、短いながらも残った牙と立派なタテガミが野生の名残を感じさせます。また、猪(豚)は一度に多数の子どもを産むことや家畜としての資産性から、中国では富の象徴となっていて、唐時代にも豚の陶像の類例が複数見られます。
赤みがかったの胎土の上に白化粧が施され、体部全体にはたっぷりと黄褐釉が掛けられています。焼成中に薪の灰が掛かり変色した肩部が、却って動物の肌の荒々しさのようにも映り、火を扱うやきものの偶然の美しさが現れています。