「十二支所作 亥 七ツ目合 仁田四郎 坂東三津五郎」「巳 江の島座頭」歌川国貞(三代豊国) 文化11年(1814)
藤沢市藤澤浮世絵館三代目坂東三津五郎の当たり芸となった歌舞伎舞踊「十二支所作事」のうち「亥 仁田四郎」を描いた作品です。曽我兄弟の仇討ちの舞台となった源頼朝による富士の牧狩りにおいて、仁田四郎の勇猛さが示された「仁田四郎の大猪退治」が題材となっています。「七ツ目合」(ななつめあわせ)とは、ある干支とその干支から数えて七つ目の干支との組み合わせを縁起の良いものとする風習で、この画でも「亥」から七つ目の「巳」が合せられています。この画では右上に「巳 江の島座頭」として琵琶法師が描かれています。「江の島座頭」も所作事(舞踊)の一つです。「巳)(へび)は江の島弁財天の神使であり、また江の島弁財天は音曲を司る神として信仰されていました。正月に上演される「寿曽我対面」にまつわる演目であり、おめでたい作品となっています。
担当者からのコメント:仁田四郎は鎌倉二代将軍頼家の富士の牧狩りの際に、富士の人穴が江の島に通じることを発見したという伝説にもつながり、亥と巳ともに藤沢・江の島にゆかりのある作品となっています。