萱草遊狗図伝毛益筆 中国・南宋時代(12世紀)
大和文華館中国・南宋(1127~1279)の宮廷で活躍した画家、毛益が描いたといわれる作品です。おそらく宮廷で飼われていたとみられる、長毛種の親犬と4匹の子犬が描かれています。画面右に咲く萱草(カンゾウ)は、男子誕生の寓意をもつ植物であることから、子孫繁栄の願いがこめられた画であるとわかります。
水墨と彩色を用いて描かれた画中モチーフは、いずれも活き活きとした生命感にあふれ、宋代における動物画の水準の高さをうかがわせる優品です。
なお本作は、17世紀初頭までには日本に伝わったとみられ、狩野派の画家や英一蝶などが、本作をもとにした犬図を描いています。東アジアにおける犬モチーフの伝播を考えるうえでも重要な作品といえます。
担当者からのコメント:大きな口をあけた親犬に、すやすやと眠る子犬、赤いリボンをした子犬、虫にいたずらしようとする子犬など、それぞれの犬の愛嬌ある表情と動きに注目してください。犬たちの毛並みは、白色顔料、濃淡の墨の細い線をたんねんに重ねることであらわされています。
本作は2018年春の当館の展観「生命の彩―花と生きものの美術―」展(2018年2月23日〈金〉~4月8日〈日〉)で展示されます。犬たちの「もふもふ感」のひみつと愛くるしい姿を、ぜひ会場でご確認ください!