犬抱き
鹿児島市立ふるさと考古歴史館土人形の地域ブランドの一つである弓野人形です。明治十五年(1882)、佐賀県武雄市西川登町弓野で製作され始めました。
顔の部分を胡粉で何度も塗り重ねてツヤを出す磨き出しの技法や鮮やかな彩色が特徴になります。
鹿児島には帖佐人形や宮之城人形など県内7ヶ所で生産されていた土人形が存在し、これらをひな節句の際、初節句を迎える子どもへ贈る習慣がありました。
しかし、昭和30年代には全ての産地で土人形製作が廃絶してしまい(現在は復興しているものもあります)、それ以後、大幅に流通したのが弓野人形でした。
作品の正確な製作年代は不明ですが、当館に寄贈いただいた方が子どもの頃から大事に保管されていたもので、少なくとも弓野人形の流通が急増する昭和30年代より前のものになります。
担当者からのコメント:艶やかな着物を羽織り、穏やかな表情を浮かべる娘さん。
皆がその佇まいに惹かれる中、娘さんの手に抱かれ“してやったり”の表情を浮かべる犬の顔に私は思わず笑ってしまいました。