動植物画稿(猿)彭城貞徳
藪 明山は画家・藪 長水の次男として生まれた人物で自身は画業へは進まず、明治10年代前半から大阪で薩摩焼の工房を始めた。素地は鹿児島の沈壽官窯から取り寄せて精密な上絵付だけを行い、作品のほとんどは博覧会などを通じて海外へと販売したため国内での認知度は高くないが欧米では高い人気を誇っている。本作品は下蕪形の花瓶に藤花と猿が描かれている。日本画的な表現ではあるが釉薬で猿の毛並みを繊細に表現することは至難であっただろう。難を去る、初春にふさわしい図様でもある猿。藤蔓で楽しげに遊ぶ自由自在な動きもみる者を飽きさせない逸品。