枯木猿猴図狩野芳崖 1887年
下関市立美術館柏の木の上から手長猿がその長い手をいっぱいに指し伸ばしています。その先には一匹の蜂が宙を舞っています。 猿が蜂を捕らえようとする図は、蜂が封、猿猴の猴が侯に字音が相通ずることから 「封侯図」という画題でも知られます。柏の樹幹は豪快に描かれ、猿の伸ばした手、その先の蜂へと繋がって躍動感のある構図を造り出しています。 墨画によるモノクロームの濃淡は空間の奥深さを感じさせます。その表現は桃山時代に活躍した長谷川等伯や、さらに遡って中国南宋末の禅僧画家牧谿の猿図を思わせます。それらは芳崖が江戸での修行時代から狩野派の故習にとらわれることなく、古画や東洋画の研究を行った成果によるものでしょう。