森の物語り今井俊 1990年
HOKUBU記念絵画館今井俊は滞在していたメキシコで見たり聞いたりしたことを木版画にして伝える画家です。彼の木版画は、白と黒だけではなく、細かい彫りで、ハーフトーンを意識させるところに特徴があります。デフォルメを強調したその画風は、遠近感を出すはずの空が、文様の一種のように扱われ、それぞれのモチーフが説明的に表現するというよりも装飾のために使われています。サルも白と黒のリズミカルな配置の一部になっているのです。ところで、このサルはよく見ると体毛が背骨から尻尾にかけて集中しています。オマキザルのようなタイプでしょうか。尻尾は樹木に絡ませているのでしょう。体が宙に浮いています。そして左手で好みの植物を掴んでいます。その隣では、くちばしの大きな鳥が羽を広げていますが、足のツメが枝を掴んでいることから、おそらく木をゆすり、サルに警戒を呼び掛けているのではないでしょうか。地上にはコヨーテなどの外敵も多い筈です。森とサル、サルと鳥が関連しはじめると物語が作品に力を与えてくれます。