第30回 坂本昇(伊丹市昆虫館 学芸員・館長)
高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川)の高田さんからご紹介いただきました、伊丹市昆虫館の坂本です。
伊丹市昆虫館は昆虫を主に扱う博物館です。1,000匹のチョウが舞い飛ぶチョウ温室、地元から海外まで多様な昆虫を展示する生態展示室を中心に、いつ来ても生きた昆虫に出会うことができます。昆虫標本や映像展示もあります。うんこ、クワガタムシ、カメムシ、いもむし、はやにえ、昆虫食など、学芸員たちこだわりのテーマで遊びゴコロいっぱいに、時にはマジメに、さまざまな展示や講座を企画しています。
そのほかにも、市街地でスズムシなどの鳴く虫を展示し、音楽など多様なイベントを開催する「鳴く虫と郷町」や、市内の郵便局、図書館とコラボした「身近な自然絵はがき」などの地域での活動、希少な昆虫の生息域外保全活動などを行っています。ミュージアムショップにも力を入れ、学芸員の撮影した写真やイラストを使ったオリジナルグッズ、専門的な道具などを販売しています。
温室でチョウをながめてのんびり過ごす、行事や街でのイベントに参加するなど、思い思いの楽しみ方ができるよう努力していますので、どうぞご利用ください。
伊丹市昆虫館 「鳴く虫と郷町」イベント
私のおすすめミュージアム
八尾市立しおんじやま古墳学習館
大阪府の東部高安山麓には心合寺山(しおんじやま)古墳があり、古墳時代中期につくられた全長160mの前方後円墳で、地域一帯を治めていた王の墓と考えられています。現在、この古墳は整備されて斜面に葺石(ふきいし)という石があったり、平らな部分に埴輪が置かれたりして、1600年前の姿に再現されています。古墳を訪れると、実際に歩いてめぐることができます。その古墳の傍らに立つのが、私がおすすめする八尾市立しおんじやま古墳学習館です。古墳からの出土品を主に展示して、その時代を学ぶことができる施設です。
古墳と学習館だけでもとても魅力的なのですが、この博物館をおすすめする理由は多彩な活動にもあります。博物館のキャラクター「ハニワこうてい」は同館を本拠地に世界征服をすべく活動していて、博物館のキャラクターの中でも異色なことに、キャラクター自身がしゃべります。しかも皇帝ゆえに、なぜか常に上から目線で話してくるのです。しかしほっこり優しくて、古墳のことも教えてくれる、ステキなキャラクターです。
地域性を生かした教育活動にも熱心です。なかでも参加して強く記憶に残っているのは「セスナ機で見る大阪の古墳体験ツアー」。八尾市内にある八尾空港からセスナ機に乗って、大阪が世界に誇る「百舌鳥・古市古墳群」の巨大な古墳たちを空から見るというツアーです。自分の目で上から見ると、町のなかに古墳がぽっこりあって、その大きさや形に大興奮!またツアーで食したお弁当もステキで、ご飯やおかずが古墳や出土品の形になっている特製の古墳懐石弁当でした。そんな大胆で楽しい取り組みを沢山なさっているのです。
近年のコロナ禍のなか、この館ではいち早くオンラインでの事業にも取り組まれています。「しおんじやま学び場オンライン」では全国の遺跡や博物館をつないで各施設の人に解説してもらうなど、オンラインだからできる講座となっています。
https://youtube.com/@haniwa-emperor
このような柔軟で大胆な活動に、いつも目が離せない博物館です。
八尾市立しおんじやま古墳学習館 心合寺山古墳全景、南側から
八尾市立しおんじやま古墳学習館 ハニワこうてい古墳案内