第21回 古賀徳子(ひめゆり平和祈念資料館 学芸員)
沖縄愛楽園交流会館の辻央さんからご紹介いただきました、ひめゆり平和祈念資料館の古賀です。
当館は、ひめゆり学徒隊の沖縄戦を伝えるミュージアムです。1989年に「ひめゆりの塔」のそばに設立されました。「ひめゆりの塔」は戦後、小説や演劇、映画などの題材となり、沖縄戦の悲劇を象徴する場所となりました。
生き残ったひめゆり学徒の多くは、長い間、戦争体験を語ることはありませんでした。しかし、資料館建設をきっかけに、交替で展示室に立ち、入館者に戦争体験を語る活動を始めました。沖縄戦で亡くなった学友や先生について知ってほしい、そして戦争の恐ろしさ、命の尊さ、平和の大切さを少しでもわかってほしいと願っていたためです。
第4展示室「鎮魂」の壁には、沖縄戦で亡くなった生徒と教師227人の写真が並んでいます。その人の名前や年齢、人柄や学校時代のエピソード、死亡状況によって、ひとりひとりが確かに生きていたことを伝えています。
ひめゆり平和祈念資料館 展示室
私のおすすめミュージアム
広島平和記念資料館
オバマ大統領の訪問、核兵器禁止条約の採択、ICANのノーベル平和賞受賞など、世界の注目が広島に集まる中、2017年に東館、2019年に本館がリニューアルオープンしました。リニューアルへの期待と関心は高く、学芸員や関係者は大変だったと思います。ひめゆり平和祈念資料館もリニューアルを控えていたため、他人事とは思えませんでした。
私も期待と不安とともに広島に向かいましたが、見学するうちに不安は消え、原爆によって命を奪われた人びとの存在が目の前に立ち上がってきました。遺品には、持ち主の顔写真やエピソードが添えられ、それを大切に保管していた親御さんやきょうだいの胸のうちも伝えています。実物や写真を通して、ひとりひとりがこの世に生きていたこと、その命を無残に奪った原爆の恐ろしさが迫ってきます。
被爆者と市民による長年の取り組みが、核兵器禁止条約の実現につながったことも実感できます。何度でも訪れたいミュージアムです。
広島平和記念資料館 外観(広島平和記念資料館提供)
広島平和記念資料館 展示室(広島平和記念資料館提供)