第17回 戸張泰子(台東区立朝倉彫塑館 学芸員)
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館の山腋さんよりご紹介いただきました台東区立朝倉彫塑館 主任研究員(学芸員)の戸張です。
当館は、日本近代を代表する彫刻家 朝倉文夫(1883~1964)が、実際に制作や生活、さらに教育の場とした空間をそのまま利用した美術館です。朝倉が自ら設計し1935年に完成した建物は、国の有形文化財に登録されています。また、朝倉の芸術思想の特質である自然観を表す庭園の芸術上・観賞上の価値が評価され、敷地全体が国の名勝に指定されています。
当館の最も大きな特徴は、彫刻はもちろんのこと、建築や庭園といったものが一体となり、朝倉の芸術観を体現しているところにあります。本来、不可視的な芸術家の思想や世界観を雄弁に物語る稀有な空間といえます。是非とも当館に一歩足を踏み入れ、壮大かつ静謐な非日常の空間で、芸術家の確かな息吹を感じていただきたいと思います。
台東区立朝倉彫塑館 書斎
私のおすすめミュージアム
原爆の図丸木美術館
私がおすすめするのは原爆の図丸木美術館(以下丸木美術館)です。
原爆投下直後の広島の惨状から目を逸らすことなく、その様を作品に残した丸木位里・俊夫妻。丸木美術館は、ふたりの作品を中心に展示活動を行い、そのメッセージを発信し続けています。
美術館めぐりが好きな方は、アートに癒されることも多いと思いますが、一方で、思いもよらぬ示唆や刺激を受け、新たな気付きを得ることもあるかと思います。丸木美術館をおすすめする理由は、実際に作品に対峙したときに、そうした気付きを得られるところにあります。見る者の心を鷲掴みにし、揺さぶり続けてくるような作品にはそうそう出会えるものではありません。作品に接し、心の内に響くものとじっくり向き合う…丸木美術館はそうした機会を与えてくれる場です。
求めるのならば、いつでも気付きを与えてくれる作品がそこにあります。熱を帯びた作品が、静かに来館者の訪問を待っています。
原爆の図丸木美術館 外観
原爆の図丸木美術館 原爆の図展示室