第14回 山内宏泰(リアス・アーク美術館 館長・学芸員)
宮城県気仙沼市に所在するリアス・アーク美術館は1994年の開館時より、美術館でありながら気仙沼とその周辺地域の歴史、民俗、生活文化資料を常設展示する変則的な施設です。東北・北海道を研究対象エリアとし、約20年間、東北北海道在住若手作家紹介シリーズ「N.E.blood 21」展を継続開催しています。また本年度で第7回目の公募となる「東北北海道の風景」公募展は隔年で開催しており、優秀な作品を館のコレクションとしています。
2011年に発生した東日本大震災では約1年半の休館、部分開館を経て2013年4月より「東日本大震災の記録と津波の災害史」常設展示を新設公開するとともに全事業を再開、現在に至ります。
1994年に同館の教育普及担当学芸員となった私は、その後展覧会企画事業、常設展示管理運営など、完全体の学芸業務を総括する立場となり、令和3年度からは館長に就任し、現在は館長職を執りつつ学芸員としての業務もこれまで同様に行っています。
リアス・アーク美術館 企画展:2022.4.9~5.15食と地域の暮らし展Vol.7「水揚げから食卓まで」会場の様子
私のおすすめミュージアム
苫小牧市美術博物館
道央地方に位置する苫小牧市は道内でも比較的温和な地域です。1963年の苫小牧港開港以来、同市は北海道を代表する港湾都市として発展してきました。また樽前山のふもとに広がる豊かな山林と豊富な水に恵まれた同地域では明治末期から製紙業が盛んに行われており、目の前の海からは漁獲量日本一を誇るホッキ貝が漁獲されるなど、資源豊かな地域です。
苫小牧市美術博物館の前身である「苫小牧市博物館」は郷土の自然や考古、歴史、アイヌ文化などに関する資料を収集・保存、展示する博物館として1985年に開館しました。美術部門の設置は2013年のことで、これを機に同館は館名を「苫小牧市美術博物館」とし、美術・人文・自然史部門を備えた総合博物館として各種事業を展開しています。
昨今、博物館は専門分野独立型の施設が主流であり、一地域を俯瞰できる総合博物館は貴重です。同館では地域の歴史・文化を学術的に紹介するとともに、同地域の総称である「日胆(にったん)」ゆかりの若手現代作家や同地に着想を得た美術作品を紹介するシリーズ企画「NITTAN ART FILE」を継続開催するなど、過去と現在の文化的交差点として非常に興味深い美術館活動を行っています。
苫小牧市美術博物館 外観
苫小牧市美術博物館 企画展「NITTAN ART FILE 4:土地の記憶~結晶化する表彰」(2022年)是恒さくら作品展示風景(撮影=佐藤祐治)