第8回 小林晶子(SOMPO美術館 学芸員)
SOMPO美術館の小林晶子です。
当館は1976年7月、「東郷青児美術館」として西新宿の安田火災海上(現在の損保ジャパン)本社ビルの42階に洋画家・東郷青児(1897年~1978年)が寄託した自作および関連作家の作品をコレクションの基盤として開館しました。東郷は、安田火災の前身である東京火災の頃から同社の保険案内等の印刷物をデザインしており、その縁で本社ビルの建設と共にその名を冠した美術館が開館しました。2年後に東郷が没すると、それまでの寄託作品を含めた約150点と資料類が遺族より寄贈されました。
その後、幾度かの名称変更を経て、当館は2020年4月に「SOMPO美術館」となり、同年7月に損保ジャパン本社ビル前の地上6階建ての建物に移転・開館しました。
さて、田村さんに取り上げていただいたように、ゴッホ《ひまわり》は移転後も変わらず常設しています。来館者の皆様に《ひまわり》の筆致や色彩をより身近に感じていただけるよう、照明の種類や向き、壁面の色、展示の高さなど、展示環境を工夫しました。
3階展示室
私のおすすめミュージアム
ひろしま美術館
おすすめしたい美術館はひろしま美術館です。
ひろしま美術館とSOMPO美術館は長年にわたり、多くの企画展でご一緒させていただいています。展覧会のテーマはもちろんのこと、展示構成面での新たな切り口や、より内容を深めるための資料をご提案いただくなど、色々な面でお世話になっています。
企画展だけでなく、ご所蔵されているコレクションにも目を見張るものがあります。西洋美術ではロマン派からバルビゾン派、印象派、ポスト印象派、そしてフォーヴ、エコール・ド・パリと、19世紀から20世紀まで、フランス美術の名作をたどることが出来ます。また黒田清輝や岸田劉生、佐伯祐三など、日本近代美術における重鎮の作品も充実しています。
ゴッホを所蔵する館の学芸員として、ゴッホの《ドービニーの庭》は特に興味深い作品です。没地のオーヴェールで最晩年に描かれたこの作品は、「消されて」しまった猫など、画家の、そして所有者の様々な思いを秘めた作品として、彼等に思いを馳せつつ、訪問の際はいつも拝見しています。
ひろしま美術館 外観
ひろしま美術館 内観