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    レポート
    特別展「怖い絵」展
    兵庫県立美術館 | 兵庫県
    知れば広がる、分かれば深まる
    恐怖に焦点をあてて、絵の時代背景や隠された物語を解説する『怖い絵』。作家・ドイツ文学者の中野京子さんが上梓した異例の美術書は、ベストセラーシリーズとなりました。同書の第1巻刊行10周年を記念し、ついに展覧会が実現。巡回最初の兵庫県立美術館での展示をご紹介します。
    ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, © The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902
    (左から)ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》オールダム美術館蔵 / フランソワ=グザヴィエ・ファーブル《スザンナと長老たち》ファーブル美術館蔵
    (左から)ウィリアム・エッティ《ふしだらな酔っ払いの乱痴気騒ぎに割り込む破壊の天使と悪魔》マンチェスター美術館蔵 / ポール=マルク=ジョゼフ・シュナヴァール《ダンテの地獄》ファーブル美術館蔵
    (左から)エドヴァルド・ムンク《マドンナ》国立西洋美術館蔵 / エドヴァルド・ムンク《死と乙女》姫路市立美術館蔵
    (左から)チャールズ・シムズ《小さな牧神》ケンブリッジ大学、フィッツウィリアム美術館蔵 / チャールズ・シムズ《ワインをたらふく飲む僕と君にこれらが何だというのだ》リーズ美術館蔵
    (左から)チャールズ・シムズ《クリオと子供たち》ロイヤル・アカデミー蔵 / チャールズ・シムズ《そして妖精たちは服を持って逃げた》リーズ美術館蔵
    (左から)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ドルバダーン城》ロイヤル・アカデミー蔵 / ジョン・マーティン《ベルシャザールの饗宴》ワズワース・アテネウム美術館蔵
    (左から)ゲルマン・フォン・ボーン《クレオパトラの死》ナント美術館蔵 / フィリップ・ハモジェニーズ・コールドロン《何処へ?》ロイヤル・アカデミー蔵
    (左から)ジャン=ポール・ローランス《ボルジアの犠牲者》プチ・パレ美術館蔵 / フレデリック・グッドール《チャールズ1世の幸福だった日々》ベリー美術館蔵

    「絵は感性で観るもの」。特に絵画展の初心者に対して、しばしば言われる言葉です。確かにその通りですが、背景を知る事で、さらに鑑賞の世界が深まる事も事実。誰でも理解しやすい「恐怖」をキーにして、絵を読み解く事の楽しさを広めてくれた中野京子さんの識見には、改めて敬意を表します。


    書籍の『怖い絵』は分野別ではありませんが、鑑賞の助けになる事を考慮して、展覧会は6章で構成されています。


    第1章は「神話と聖書」。ギリシャ・ローマ神話や旧約・新約聖書の場面を描いた絵画は定番ですが、内容は必ずしも幸福ではありません。杯を出すキルケーは、近づく男を動物に変えてしまう魔女。海から誘惑する美女は、歌声で船人を惑わせる怪物セイレーンです。


    第2章の「悪魔、地獄、怪物」も、洋の東西を問わず見られる画題。日本の美術でも多くの表現があるように、キリスト教世界にも、さまざまな魔物が徘徊しています。


    第1章「神話と聖書」、第2章「悪魔、地獄、怪物」


    第3章は「異界と幻視」。ペストや戦乱など、死の影が身近にあった中世末期のヨーロッパ。日常の隣から突然顔を出す死の気配に、人々は苛まれます。


    実は最も恐ろしいのは、第4章「現実」かもしれません。描かれているのは殺人など、より現実的な恐怖の場面。連続殺人鬼「切り裂きジャック」の部屋を描いた画家は、切り裂きジャックその人であるという説もあります。


    第3章「異界と幻視」、第4章「現実」


    第5章「崇高の風景」には、一見すると美しい風景画が並びますが、やはり背景には恐ろしい物語が。ターナーが描いた《ドルバダーン城》は、権力争いの末に弟が兄を20年以上幽閉した古城です。


    展覧会の目玉《レディ・ジェーン・グレイの処刑》は、第6章「歴史」で展示されています。今まさに処刑されようとしている、16歳の若き元女王。巨大な画面に迫真の描写ですが、実際の処刑は戸外で行われました。ロンドン・ナショナル・ギャラリーの大人気作品、堂々の初来日です。


    第5章「崇高の風景」、第6章「歴史」


    もともと『怖い絵』シリーズは展覧会を目的に執筆されたわけではなく(所蔵館から出せない作品も紹介されています)、開催にあたり、中野さんが展覧会を特別監修。《レディ・ジェーン・グレイの処刑》の貸し出しにも大変な苦労があったそうで、何回も交渉を重ねた末についに来日が実現しました。


    兵庫での展示は9月18日(月・祝)まで。10月7日(土)から東京展(上野の森美術館)が始まります。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年7月21日 ]


    怖い絵怖い絵

    中野 京子 (著)

    角川書店
    ¥ 734


    ■怖い絵 に関するツイート


    会場
    会期
    2017年7月22日(土)~9月18日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00 (特別展開催中の金曜日と土曜日は20:00まで)
    ※入場は閉館の30分前まで
    休館日
    月曜日(ただし9月18日(月・祝)は開館)
    住所
    兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]
    電話 078-262-0901
    公式サイト http://www.artm.pref.hyogo.jp/
    料金
    一般 1,400(1,200)円、大学生 1,000(800)円、70歳以上 700(600)円、高校生以下無料
    ()内は前売料金(一般・大学生のみ)および20名以上の団体
    展覧会詳細 特別展「怖い絵」展 詳細情報
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