根津美術館ご自慢の庭園でも、カキツバタが見ごろとなるこの季節。尾形光琳による国宝《燕子花図屏風》を楽しめるのは、この時期だけのお楽しみです。
今回、並べて展示されているのは、鈴木其一《夏秋渓流図屏風》。尾形光琳を私淑した酒井抱一、その弟子が鈴木其一。其一は
昨年の大規模展も話題になりました。
デザイン画のような国宝《燕子花図屏風》に対し、《夏秋渓流図屏風》は体裁としては風景図。ただ、うねるような水流、大きすぎるユリ、ストップモーションのような紅葉と、どこか非現実的な要素も見られます。
似ている点を挙げれば、まず金地に青と緑という色合い。縦位置のモチーフがリズミカルに連なる点も類似しています。
展示ケースの反対側では、6枚のパネルによる詳細な解説も。《燕子花図屏風》の伝来や、「其一は応挙を見たか?」など、興味深いコラムもお楽しみください。
展覧会では、其一が活躍した19世紀前半から20世紀初頭までに江戸=東京で制作された作品もあわせて展示されています。
第1展示室展覧会は第2展示室にも続きます。
あまり比較される事はありませんが、東海道五十三次で知られる歌川広重は鈴木其一と同時代の画家(広重は其一のひとつ年下です)。《高尾大夫・吉原通船図》は吉原の遊女が詠んだ句をもとに描かれた肉筆浮世絵です。
会場最後は、最近注目度が高まりつつある渡辺省亭(わたなべせいてい)。省亭は明治から大正にかけて活躍した日本画家で、遊学先のパリで印象派の画家たちとも交流しています。展示されているのは、晩年の軽妙な作品《不忍蓮・枯野牧童図》です。
第2展示室なお、燕子花図屏風は2017年の「切手趣味週間」のデザインに選ばれました。燕子花図屏風は、2011年の「旅の風景シリーズ」や、古くは1970年の日本万国博覧会の記念切手として採用された事がありますが、今回は右隻・左隻の全面が切手になりました。全国の郵便等でお求めいただけます(根津美術館では販売していません)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月11日 ]■燕子花図と夏秋渓流図 に関するツイート