性的な事柄を、時にユーモアを交えて描いた春画。そもそも錦絵が江戸で大きく花開いた事もあって、どうしても春画は江戸を中心に語られがちです。
ただ、実は春画の誕生は平安時代の中頃。錦絵が生まれるずっと前から、京都を舞台に貴族の男女や僧尼が登場する春画を、当代一流の絵師が描いていたのです。
そういう意味では「里帰り」とも言える、京都での春画展。冒頭で展示されている蹄斎北馬《相愛の図屏風》など、13点は京都展のみの特別出展です。西川祐信の長男・西川祐尹の肉筆画や、土佐派の春画を模写した画巻(下村観山の旧蔵品)など、珍しい作品も並んでいます。
肉筆画
人間の性愛は隠すものではなく、愛でて楽しむものとされていた時代。鳥文斎栄之《四季競艶図》、月岡雪鼎《四季図巻》など華麗な肉筆画。鳥居清長《袖の巻》、喜多川歌麿《歌まくら》、葛飾北斎《喜能会之故真通》など凝った構成が楽しい版画。豆版に記された極小の性表現と、さまざまな春画を見ると、社会がその表現を楽しんで受け入れてきたさまもよく分かります。
展示室が独立している細見美術館。いったん外に出てから次の展示室に進む動線になるため、次のドアを開けるたびにどんな春画が登場するのか、東京展とは違ったドキドキ感も含めてお楽しみいただけると思います。
版画
京都駅から市バスで30分ほどの細見美術館。目と鼻の先には京都国立近代美術館と京都市美術館があり、美術好きにはたまらない好立地です。関西の方はもちろん、東京圏からの遠征もオススメです。
後期展の取材レポート →
※会期中に展示替えがあります。
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[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年2月5日 ]
| | 春画入門
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■細見美術館 春画展 に関するツイート