今でも夏の甲子園には多くのファンが集まるように、ひたむきな若者の汗と涙は、いつの時代も私たちの心に刺さります。結果に至るまでの過程を大切にする日本人にとって、「血の滲む特訓+ライバルとの死闘」というスポコンは、馴染み深い型ともいえます。
本展では、そのスポコンの型を作ったといえる主要4作品を紹介。まず「アタックNo.1」からです。
転校性の鮎原こずえがバレーボールに没頭し、多くの人に支えられて中学、高校、そして世界へ羽ばたいていく物語。「秘球・木の葉おとし」などのスポコンらしい必殺技と、「だけど、涙が出ちゃう…女の子だもん」の主題歌が印象に残ります。
「アタックNo.1」続いて、スポコンの代名詞ともいえる「巨人の星」。1968~71年、全182話にわたってテレビアニメで放映されました。
漫画原画や設定資料に加え、1号から3号までの大リーグボールを映像で紹介。豪快な投球フォームから繰り出される驚きの魔球に、左門やオズマらがキリキリ舞いさせられる場面をお楽しみいただけます。
ちなみに、いつも影から飛雄馬を見守っていた明子姉ちゃんは、会場でも隠れるように立っています。ぜひ現地で探してください。
「巨人の星」一大テニスブームを巻き起こしたのが「エースをねらえ!」。県立高校のテニス部に入部した主人公・岡ひろみが一流テニス選手へ成長していく物語です。イケメンの宗方コーチ、憧れの先輩・お蝶夫人、ライバルの緑川蘭子らとの人間関係も作品の魅力でした。
アニメ「エースをねらえ!」は、テレビシリーズ・劇術版ともに出崎統(でざきおさむ)が監督。出崎監督は「ハーモニー技法」(止まった絵をセル画から水彩画風に変化させ、シーンを印象づける演出)など、斬新な手法を創案し、ジャパニメーションの礎を作った名監督ですが、残念ながら2011年に67歳で亡くなりました。
「エースをねらえ!」最後は「あしたのジョー」(「あしたのジョー2」を含む)。コーナー入口にある、高森朝雄(梶原一騎)がちばてつやに宛てた原稿は初公開となります。
ここには10台のスクリーンを設置し、ライバルたちとの死闘を放映。力石徹をはじめ、カーロス・リベラ、金竜飛、ハリマオ、そしてホセ・メンドーサと、血みどろの闘いを繰り広げてきたジョーの、熱い息づかいが響いてきそうです。
会場最後は、真っ白な灰になった矢吹丈。ここでは真上からピンスポットが当たっていますので、ジョーの気分をお楽しみください。
「あしたのジョー」現在の感覚からするとDVとパワハラも随所に見られますが、目標に向かう真っ直ぐな想いは駆け引き無し。会場を出る頃には、なぜか気合いが入っている事と思います。
なお本展は、全身ユニフォーム姿で来場された方は入場無料となる、かなり珍しい企画も実施中。スポーツ競技のユニフォームなら野球やサッカーはもちろん、剣道でもアメフトでも相撲でも構いません。我こそは、というアツい方、お待ちいたしております(帽子だけなど、一部のみユニフォームの方は対象外です)
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年8月26日 ]© 高森朝雄・ちばてつや/講談社・TMS © 高森朝雄・ちばてつや/講談社 © 山本鈴美香/集英社・TMS © 山本鈴美香/集英社 © 浦野千賀子・TMS © 浦野千賀子 © 梶原一騎・川崎のぼる/講談社・TMS © 梶原一騎・川崎のぼる/講談社"