東日本大震災から3年、新潟県中越地震から10年を迎えることを機に開催される本展。東京で大規模な法隆寺展が行われるのは、20年ぶりとなります。
東京展の目玉は、毘沙門天立像と吉祥天立像(ともに国宝)。法隆寺では金堂の釈迦三尊像の脇に安置されている、大変重要な像です。
護法を司る毘沙門天と、その妃とされ厄災を払い幸運をもたらす吉祥天。両尊の利益を祈念して、特別に出品されました。
順に、国宝《毘沙門天立像》、国宝《吉祥天立像》 ともに法隆寺蔵展覧会は「美と信仰 法隆寺の仏教美術」「法隆寺と東京美術学校」「法隆寺と近代日本美術」の3章構成です。会場では冒頭(地下2階)で1章の一部と2~3章、続く3階で1章の残りが紹介されます(藝大美術館は地下2階 → 3階と進みます)。
1章の「法隆寺と東京美術学校」では、岡倉天心が調査した法隆寺の寺宝や、東京藝術大学教授による奉納品が紹介されます。
廃仏毀釈の進む明治の日本で、日本の伝統美術を救ったフェノロサと天心。天心がつくった東京美術学校と法隆寺は、作品の奉納や壁画の模写などで深い関わりを持っていました。
第2章「法隆寺と東京美術学校」3章「法隆寺と近代日本美術」では、法隆寺と関わりが深い近代日本美術が展示されています。
冒頭の大きな油彩画は、和田英作による《金堂落慶之図》。鞍作止利が聖徳太子らを完成した壁画の前に案内している場面を描いた、191×418センチの大作です。
第2章「法隆寺と近代日本絵画」3階に進むと、再び第1章「美と信仰 法隆寺の仏教美術」に。広い会場に仏像をはじめとした名宝が並ぶ、厳かな展示室空間です。
会場奥の重要文化財《阿弥陀如来坐像》は、三経院に安置されている像で12世紀(平安時代)の作。
ふっくらとした童子は、聖徳太子二歳児の伝説に基づく《聖徳太子立像(二歳像)》です。二歳の太子は仏涅槃の日(2月25日)に、誰にも教わらずに東を向いて合掌したと伝えられています。
仏像を紹介する展覧会での楽しみのひとつが、背後に回って見られること。柔和な表情が印象的な重要文化財《薬師如来坐像》も、360度で鑑賞可能です。広くて明るい展示室でのびのびと鑑賞できるのは、ミュージアムならではの魅力といえるでしょう
3階の会場。順に、重要文化財《阿弥陀如来坐像》、《増長天立像》と《持国天立像》、《聖徳太子立像(二歳像)》、重要文化財《薬師如来坐像》、重要文化財《菩薩立像》 いずれも法隆寺蔵昭和24(1949)年に金堂壁画が焼損するなど、法隆寺は数々の苦難に直面してきましたが(文化財保護法はこれがきっかけに制定されました)、その度ごとに力強く復興を果たしてきました。
法隆寺の長い歴史に、震災からの復興への祈りを重ね合わせた展覧会。仙台展、東京展の後は、2014年7月5日(土)~8月17日(日)に、
新潟県立近代美術館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月25日 ]