著名な美術家の作品でも、簡単には見られない作品があります。最たる例は個人所有の作品ですが、実は企業が持っている美術品でも、一般の人が目にするのは難しい例が数多くあります。
その理由は、例えば役員室に飾っている作品を展覧会に貸し出すと、その間は役員室に何を飾るの?という現実的な課題から。自ずと所蔵作品の貸し出しには二の足を踏む企業も多い中、住友グルーブ各社が持つ所蔵作品を一堂に集めるという嬉しい企画が本展です。
会場は三章構成、第1章は「明治洋画の牽引者たち」です。外光派のラファエル・コランに学び日本洋画界をリードした黒田清輝、住友家が支援してパリに留学した鹿子木孟郎(かこのぎたけしろう)、そして藤島武二や和田栄作など、明治の洋画を牽引した巨匠の作品が並びます。
第1章「明治洋画の牽引者たち」続いて第2章は「沸騰する時代のエトランジェ、パリ豚児の群れ」。ここでは藤田嗣治(レオナール・フジタ)や佐伯祐三など、1920年代に日本的な洋画壇を確立した画家を紹介しています。
ひときわ目立つ巨大な馬の作品は、坂本繁二郎による「二馬壁画」。パリからの帰国後に馬の作品を多く残した坂本ですが、これは240cm×240cmとという大作で、坂本が描いた馬の油彩としては最大級です。住友家が依頼して描かれたもので、麻布別邸の壁に据え付けられました。
第2章「沸騰する時代のエトランジェ、パリ豚児の群れ」最後は第3章「クールなパリで個性を研く ─ 1930年代以降の留学、現代への架け橋として」。1930年代以降にパリに留学した画家たちをフューチャーしました。
的確な構成力で人物を二人のバレリーナを描いた作品は、小磯良平の「踊り子二人」。小磯はパリ留学中にドガの作品に啓示を受けました。
同じく踊り子を描いた隣の作品は、木下孝則「バレリーナ」。木下孝則は前田寛治、小島善太郎、里見勝蔵、佐伯祐三とともに1930年を立ち上げたひとり。穏やかな写実的表現で描いた女性像を得意にしました。
第3章「クールなパリで個性を研く ─ 1930年代以降の留学、現代への架け橋として」 動画の最後が、右から小磯良平「踊り子二人」、木下孝則「バレリーナ」東京展は5月11日(日)まで。5月17日(土)からは、京都の泉屋博古館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年3月14日 ]