「日本かぶれのナビ」と呼ばれたピエール・ボナールは、19世紀末から20世紀前半に活躍したナビ派の画家です。ナビ派の特徴ともいえる平面的・装飾的な画面に加えて、ボナールは日本美術の影響を強く受けているといわれます。
この展覧会の冒頭に出てくる細長い画面は、掛け軸を思わせますし、華奢な全身像の女性たちは、美人画のようにも見え、「日本かぶれのナビ」を感じることができます。
庭の女性たち 左から《白い水玉模様を着た女性》《猫と座る女性》《ショルダー・ケープを着た女性》《格子柄の服を着た女性》
こちらの4枚のパネルでは、女性たちの色とりどりのドレスの柄や、背景の植物を装飾化しているところが印象的でした。
左からポスター《百人展》《版画とポスター》《創作版画展》
ボナールは、ポスターや書籍・楽譜の挿絵も手がけました。当時のパリの風俗や柔らかなタッチで描かれた動物たちは、温かみがありなんとも愛らしいものです。
左から《浴盤にしゃがむ裸婦》《浴室の裸婦》
今回の展覧会では、「近代の水の精(ナイアス)たち」という章を設け、多数の浴槽の裸婦たちが展示されています。
裸婦の連作はボナールの特徴の一つでもあります。
それらは神経症の治療のため入浴が欠かせなかった妻マルトを描いたと言われていますが、マルトとの結婚後自殺したルネという女性の影響もあるとも言われています。
浴槽の女性たちの肌はいずれも滑らかで柔らかい室内の光の中で輝いています。
左から《猫と女性 あるいは 餌をねだる猫》《食卓の母と二人の子ども》
ボナールは家庭という身近な場面を描いていることから「親密派」とも呼ばれています。
今回もボナールの家族や飼われていた猫たちが登場する食卓の場面がありました。
ぼんやりと見える画面は「ふいに部屋に入った時一度に見えるもの」を描きたかったからだというボナールの言葉が残されています。
私はその画面に幸せな光景の中に潜む不安な空気を感じます。それは、20世紀初頭の不安定な社会情勢が絵の中に溶け込んでいるのかもしれません。
左から《にぎやかな風景》《地中海の庭》
展覧会終盤では、自然あふれるノルマンディー地方や南フランスなどの風景画が並びます。
青い空や豊かな木々の茂みは見ていてくつろいだ気持ちにさせられるものでした。
室内画のイメージが強かったボナールの違った一面も感じることができました。
ボナールの絵に登場した動物たちのオリジナルグッズも可愛かったです。
また絵の中の白猫ちゃんを演じた神田沙也加さんの音声ガイドもおすすめです。
近年注目度急上昇のナビ派の代表的な画家であるボナール。芸術の秋に足を運んでみてはいかがでしょうか。
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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