藤田嗣治の没後50年を記念して、大掛かりな回顧展が開催されました。
藤田嗣治といえば、「乳白色の裸婦」あるいは「作戦記録画(戦争画)」が有名ですが、藤田研究の第一人者である林洋子さんの監修のもと、今回は藤田の全生涯に渡っての作品を注目しています。
展覧会フォトスポットの風景
1913年に初めて渡仏した藤田は、パリに集まる外国人芸術家集団「エコール・ド・パリ」の一員として脚光を浴びます。
そこでピカソやモディリアーニとの交流が始まりますが、本展でもピカソのキュビスム風の静物画やモディリアーニの女性像風の人物画などがあり、パリで試行錯誤をしていた若き日の藤田もうかがい知ることができました。
《二人の少女》、1918年、プティ・パレ美術館(スイス・ジュネーヴ)蔵、©Fondation Foujita / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2017 E2833
こちらの作品は、1920年代に一世を風靡する「乳白色の下地」を予告させるようです。
すんなりとした少女の体つき、黒い瞳と小さな口、そしてすべすべの素肌にはのちの藤田の婦人画の特徴がはっきりと出ています。
《自画像》、1929年、東京国立近代美術館蔵、©Fondation Foujita / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2017 E2833
藤田は、自画像を多く描いた作家でもあります。
おかっぱ頭、丸眼鏡、ちょび髭の藤田は、私たちが良く知る藤田像です。
裸婦画の繊細な輪郭線を作り上げた墨と硯と面相筆が、この自画像の中にも描かれています。
《争闘(猫)》、1940年、東京国立近代美術館蔵、©Fondation Foujita / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2017 E2833
猫好きでも知られる藤田ですが、こちらの猫たちはなにやら不穏な表情をしています。
この作品は第2次世界大戦がはじまったのちに描かれたものです。
いつも愛らしい猫たちが争いを起こしている姿は、深刻化していく戦争の時代を例えているようです。
その後図らずも代名詞となってしまった「作戦記録画(戦争画)」を描いた藤田の人生は、2つの大戦に翻弄されたものでした。
展示風景 ©Fondation Foujita / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2017 E2833
戦後の1949年にニューヨークを経てパリに移った藤田は、その後日本に帰ることはありませんでした。
晩年の藤田は、 裸婦、子供たちを描き、パリの風景を切り取っていきます。
本展でポスターになっている《カフェ》が、今回は下絵とともに展示されているのは興味深いところです。
この作品の下絵はニューヨークで描かれたものだそうです。
第2の故郷でもあるパリに早く戻りたい、そんな藤田の郷愁が感じられるようです。
《礼拝》、1962-63年、パリ市立近代美術館(フランス)蔵、 ©Fondation Foujita / ADAGP,Paris & JASPAR,Tokyo,2017 E2833
カトリック教徒となり、レオナール・フジタという洗礼名は尊敬するレオナルド・ダ・ヴィンチからきているそうです。
藤田嗣治は、今でもフランスで最も尊敬されている日本人芸術家です。
その人生にはたくさんの逸話があります。どれが本当の藤田だったのでしょう。
日本でこれほどの回顧展が開かれることは、今後もあまりないとのことでした。
ぜひ会場で、みなさんなりの藤田像を感じてみてはいかがでしょうか。
また、本展はオリジナル・グッズも充実していて大注目です。
特にしりあがり寿さんの「フジタ画伯」のグッズはユーモラスでおすすめです。
「フジタ画伯」のオリジナル・グッズ
会場 | 東京都美術館 |
開催期間 | 2018年7月31日(火)~2018年10月8日(月・祝)
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休館日 | 月曜日、9月18日(火)、25日(火) ※ただし、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)、10月1日(月)、8日(月・祝)は開室 |
開館時間 | 9:30~17:30(入館は17:00まで)、金曜日は~20:00まで |
所在地 | 東京都台東区上野公園8-36 |
03-5777-8600(ハローダイヤル) |
HP : http://www.tobikan.jp/ |
料金 | 一般 1,600円、大学生・専門学校生 1,300円、高校生 800円、65歳以上 1,000円 |
展覧会詳細へ |
没後50年 藤田嗣治展」 詳細情報 |
エリアレポーターのご紹介
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松田佳子
湘南在住の社会人です。子供の頃から亡き父のお供をして出かけた美術館は、私にとって日常のストレスをリセットしてくれる大切な場所です。展覧会を楽しくお伝えできたらと思います。
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