本展は5章構成。和様の書の名筆を一堂に集め、その魅力に迫ります。
第1章 書の鑑賞
第2章 仮名の成立と三跡
第3章 信仰と書
第4章 高野切と古筆
第5章 世尊寺流と和様の展開
会場まず最初の注目が、「天下人の書」。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の書が揃います。
尊大で簡潔な信長の書、おおらかな筆致の秀吉の書、孫を気づかう祖父の姿が表れている家康の書。文面からは、それぞれの個性も伺えます。
ちなみに、あまり紹介されていませんが、本展タイトルの「和様の書」の「の」は、豊臣秀吉が書いた文字が使われています。
順に重要文化財《書状(与一郎宛)》織田信長筆 安土桃山時代・天正5年(1577) 東京・永青文庫蔵 展示期間:~8月12日(月)/重要美術品《吉野懐紙(豊臣秀吉和歌懐紙)》 安土桃山時代・文禄3年(1594) 宮城・仙台市博物館蔵 展示期間:~8月12日(月)/《消息(おね宛)》豊臣秀吉筆 安土桃山時代・文禄2年(1593) 京都・高台寺蔵 展示期間:~8月12日(月)/《消息(ちょほ宛)》徳川家康筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵 展示期間:~8月4日(日)「手鑑」(てかがみ)とは、手(筆跡)のアルバムのこと。鑑賞の対象になった古筆を、台帳のように編集したものです。
現在、国宝に指定されている手鑑は4点のみ。本展では「四大手鑑」すべてが出展されています。
国宝《手鑑 藻塩草》 奈良~室町時代・8~16世紀 京都国立博物館蔵 展示期間:~8月12日(月) 頁替あり和様の書が成立した時代に活躍した能書三人が三跡(さんせき)。小野道風(おののとうふう)、藤原佐理(ふじわらのさり)、藤原行成(ふじわらのこうぜい)です。
展覧会では、三跡の書も全て展示。「王羲之の生まれ変わり」とまで称された道風、奔放で闊達な佐理、夢に見るほど道風に憧れていた行成。三人の書を比べて見るという贅沢な楽しみ方が可能です。
順に重要文化財《常楽里閑居詩》小野道風筆 平安時代・10世紀 東京・前田育徳会蔵 展示期間:~7月28日(月)/国宝《円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書》小野道風筆 平安時代・延長5年(927) 東京国立博物館蔵/《玉泉帖》小野道風筆 平安時代・10世紀 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:~8月12日(月)展覧会の最後は、江戸時代までの書の展開について。
文字が配された蒔絵の硯箱、大きな屏風に書かれた書なども展示。バラエティ豊かな構成なので、最後まで飽きさせません。
会場出品作品156件の中で、86件が国宝・重要文化財という豪華な展覧会。本稿ではご紹介できませんでしたが、本年6月18日に世界記憶遺産に認定されたばかりの国宝《御堂関白記》藤原道長筆は認定後初公開となります。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年7月12日 ]