世界で初めて生きたダイオウイカを撮影した、NHKスペシャル「世界初撮影!深海の超巨大イカ」。今年1月の放映は大きな反響を呼びました。
本展は、同番組で世紀のプロジェクトを成功させた国立科学博物館の窪寺恒己氏と、海洋研究開発機構の藤倉克則氏が監修。話題のダイオウイカの標本はもちろん、潜水調査の機器や貴重な生物標本などを展示しながら、徐々に明らかになりつつある深海の世界を紹介する企画です。
会場に入ってまず注目は「しんかい6500」の実物大模型。深海調査の分野では世界トップクラスの日本が誇る、有人潜水調査船です。乗組員3人が入れる球状の耐圧殻(たいあつこく=コックピット)の内部を覗けるほか、船体に投影される映像で船の仕組みが紹介されます。
最初の見ものは「しんかい6500」深海に生息するさまざまな生きものを展示しているのが「深海生物図鑑」のコーナー。深海生物の標本など約380点が並びます。
深海の生きものといえば、目が退化したり、体が光ったりと「いかにも」という姿をつい想像しがちですが、実際は良く目にするような生きものも多数存在します。ここでは、生物の分類学に則って紹介されています。
「深海生物図鑑」コーナー目玉のダイオウイカの標本は「深海への適応」コーナーです。国立科学博物館が所蔵する標本で、2007年に島根県出雲市沖で捕獲しました。ダイオウイカは二本の長い触腕が特徴で、この標本は全長約5メートルという巨大さです。
ヨーロッパでは大航海時代から、船ごと海中に引きずり込んでしまう「海の魔物」として恐れられてきた伝説の巨大イカ。生きている姿を捉えた世紀の映像も「深海シアター」で見ることができます。
ダイオウイカの標本私たちとは縁遠いようにも思える深海の世界ですが、深海に住む生きものは、実は食卓ではおなじみ。最後の「深海の開発と未来」コーナーでは、私たちがよく口にする食べ物と、その材料である魚の姿が比べて見られるように展示されています。
「深海の開発と未来」コーナーNHKスペシャルで火がついた“イカブーム”の追い風を受けて始まった本展。報道向け内覧会にも相当な数の関係者が押し寄せるなど、大きな注目を集めています。図録も読み応え満点で、グッズ売り場には注目のイカグッズも盛りだくさん。時間とお財布には余裕を持ってお出かけください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年7月5日 ]