コスチュームジュエリーとは、宝石や貴金属を用いず、ガラスや貝、樹脂など多種多様な素材で制作されるファッションジュエリーのことです。
この展覧会では、20世紀初めから戦後に至るコスチュームジュエリーの歴史的展開を紹介しています。コスチュームジュエリーの研究家でありコレクターの小瀧千佐子さんによる世界的に希少なコレクションからジュエリー約450点と、当時のドレスやファッション雑誌などの関連作品を堪能することができます。
企画展会場入り口
コスチュームジュエリーの先駆者「ポール・ポワレ」
20世紀の女性のファッションに大きな影響を与えたポール・ポワレ(1879-1944)。コスチュームジュエリーを最初に制作した先駆者です。
写真の夜会用マスク、ブレスレット“深海”は、メタリックチュールにガラスビーズとクリスタルガラスで刺繍が施されていて、マスクにデザインされた「タコ」が深海をイメージさせます。宝石では表現しきれないデザインの自由さや細かな濃淡に、コスチュームジュエリーの魅力を感じました。
ポール・ポワレ《夜会用マスク、ブレスレット “深海” 》(制作:マドレーヌ・パニゾン)1919年、メタリックチュールにガラスビーズとクリスタルガラスで刺繍、小瀧千佐子蔵
マスクに「タコ」のモチーフがデザインされている
デザイナーたちのこだわりが光るコスチュームジュエリー
会場にはシャネルやディオール、スキャパレッリなど、有名デザイナーが考案したコスチュームジュエリーが展示されています。作品がたくさんありすぎて全ては紹介できないので、私が気に入った2つを紹介します。
まずは、シャネルがデザインしたネックレス“花”モチーフ(メゾン・グリポワ制作)。シャネルらしい上品で繊細なデザインと、宝石では表現が難しいまだら模様の薄ピンクの花びらがとても気に入りました!
シャネル《ネックレス “花” モチーフ》(制作:メゾン・グリポワ)1938年、パート・ド・ヴェール・エナメル ガラス、メタル、小瀧千佐子蔵
続いて、日本ではこの展覧会で初めて紹介されるジュエリーデザイナーのリーン・ヴォートラン(1913-1997)。1つ1つの作品に歴史や文学、哲学などのテーマを盛り込み、独創的なジュエリーを生み出しています。
例えばこちらのブローチ“白雪姫と七人の小人”。白雪姫と王子様、小人がデザインされていますが、数えると小人は6人しかいません。1人はどこに行ったの?昼寝でもしているのかな?など、作品を通じて物語が想像できる魅力があります。
《ブローチ“白雪姫と七人の小人”》(デザイン/制作:リーン・ヴォートラン)1945年頃、金色ブロンズ、小瀧千佐子蔵
愛知県美術館限定の出展作品!
愛知県美術館では広い展示スペースを活かして、ポール・ポワレ、シャネルやディオール、イヴ・サンローランなどのドレスやスーツを他会場よりも多く展示しています。こちらの「ミス・ディオール」の香水瓶の展示は愛知県美術館限定!ファッション雑誌やファッションプレートといった関連資料も充実しています。
学芸員の森さんは「コスチュームジュエリー単体ではなく、ドレスや写真資料を通して、当時の女性がどのようにジュエリーを楽しんでいたかイメージしてほしい」と話していました。
バカラ《香水瓶「ミス・ディオール」赤・白・青》1948年、ガラス、高砂コレクション®
自分の“好き!”を見つける展覧会
個性豊かなジュエリーが揃う今回の展覧会。作品を鑑賞する中で「このデザインが好き」「この色が好き」など、自分の“好き”を再発見する事ができました!
皆さんも自分の感性を刺激するお気に入りの作品に出会いに、愛知県美術館へ出掛けてみてください♪
会場風景
[ 取材・撮影・文:浦野莉恵/ 2024年4月26日 ]