名古屋のヤマザキマザック美術館で、現代美術家の藤原更の「Photograph 記憶の花 藤原更 Sarah Fujiwara」展が始まりました。
展覧会の説明によれば、藤原の「Photograph」とは「光で描く」とあります。写真を「写す」のではなく、「描く」とは、どのような作品なのか、とても興味を惹かれます。
美術館入口
本展は、「花三部作」(蓮・薔薇・芥子)から、およそ30点の作品を選び、3章+αに分けて展示しています。展示室は暗めに調光され、それぞれの作品がスポットライトで浮かび上がり、厳粛な雰囲気です。 それでは、順番に作品を見ていきましょう。
展示室入口
第一章 蓮 NEUMA
綺麗な青やパステル調の色合いの作品です。細い線が何本も重なり合い、不思議な奥行き感があります。
会場風景 アーティストトークの様子
色調をデジタル処理したように見えますが、ストレート写真です。4×5のインスタントフィルムを現像する際に、様々な手を加え、この色調を出しているそうです。
会場風景 左から《Neuma05》撮影:2011年 プリント年:2012年 《Neuma06》撮影:2011 プリント年:2012年
第二章 薔薇 LA VIE EN ROSE
薔薇の花を写した作品です。作品の前をゆっくりと動いて、鑑賞してください。不思議なことに、鑑賞者に反応して見え方が変化します。
会場風景 アーティストトークの様子 《La vie en rose 05》 撮影:2014年 制作年:2015年 プリント年:2015年
色温度という言葉を聞いたことはありますか。色温度が高いと光は青味がかかり、低いと赤味がかかるそうです。このシリーズでは、色温度を利用して、作品の印象を際立たせています。
第三章 芥子 MELTING PETALS
大きな赤色の塊が、にじむように広がる作品です。ずっと昔に見た花畑の様子を、当時の記憶をもとに再現したそうです。
会場風景 アーティストトークの様子
会場風景
布を使ったインスタレーションが天井から吊るされ、展示室全体が夕焼けの色で埋め尽くされています。
会場風景
UNCOVERED PRESENT
藤原の新しい挑戦を垣間見せています。残念ながら、このコーナーは撮影禁止なので、お見せできる写真がありません。ヒントは、2.5次元を写真で表現した作品です。
本展を見ると、写真とは、こういうものですと説明することにためらいを感じる驚きがあります。同時に、写真とは、どこまでも自由に表現を広げられる技法だと感心します。
本展の会期中、担当学芸員によるギャラリートークが予定されています。事前に展示を見てから、参加することをお勧めします。写真表現の枠を超える藤原の作品を、ぜひお楽しみください。
本展の展示趣旨に沿い、読み解くことよりも感じることを大切にするため、本レポートでは作品説明を控えめにしています。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2024年4月27日 ]