バッドアート美術館のきっかけは、ボストンの画商がごみの中から拾った1枚のアート。画商は、絵を処分して額縁を売るつもりでしたが、画商の友人がその絵を気に入って自宅に飾った事から、バッドアートが収集されるようになりました。
バッドアート作品の収集には基準があり、あくまでも誰かが真剣に描いた作品であることが前提。わざと描かれた酷い絵は、対象外です。真剣に描いたにも関わらず面白く、さらに人を惹きつける力を持っている事が必要で、今では800点超のバッドアートが集まりました。
本展は日本初のバッドアート美術館展。会場は以下の7章構成です。
肖像画ならぬ「笑像画」 人間って難しいよね
ありそうにない風景画・静物画 象徴の華麗なミスマッチ
ぬーど絵画集 ※ぬーど的な描写を含みます。
バッドアート動物園 モフモフ!パタパタ!ピチピチ!
ドッペルゲン画 ─ 知ってか知らずか、有名人に似てしまった絵
バッドアート運動会 反則覚悟の絵画たち
溢れ出る宗教観(悪気は全くありません!)
展覧会のスペシャルサポーターには、漫画家のしりあがり寿さんが就任。しりあがり寿さんが気になった作品には、ユーモラスな解説がつけられています。
VIDEO 一般的な美術展とは違い、お笑い要素に溢れた企画。作品は多くが額装無しで、会場もあえてチープ感が強く出ているため、美術展に「眼福」を求める方は、もちろん不向きです。
展覧会の意図は理解しつつ、あえてこの項でご紹介するのは、微妙な感覚を覚えたから。「美しく無い」「上手く無い」にも関わらず「人を惹き付ける」作品は、実は一般的な展覧会(特に現代美術)では、しばしば見られます。
しりあがり寿さんの突っ込みが入っていたのは、マリアを撫でるセクハラっぽい作品や、キャンバスをショットガンで撃った作品など。ただ、ニキ・ド・サンファルは「射撃絵画」で名を馳せましたし、娘が父に母乳を与えるルーベンス「ローマの慈愛(キモンとペロ)」も、現代の感覚では相当違和感があります。
‘バッドアート’と‘グッドアート’の境界は、実は曖昧なのかもしれません。
ちなみにバッドアート美術館は、CNNが2017年に選んだ「15 of the world's weirdest museums」(世界で最も奇妙なミュージアム15選)において、2番目で紹介されています。日本では唯一、安藤百福発明記念館 大阪池田(旧:インスタントラーメン発明記念館)が12番目、1番目は北京自来水博物館でした。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年11月21日 ]