会場風景
大阪歴史博物館で開催中の「異界彷徨 ー怪異・祈り・生と死ー」展を見てきました。 ワクワクするような、ドキドキする怖いもの見たさのような「異界」という言葉が発する独特のイメージに引き寄せられます。 大阪歴史博物館の館蔵品を中心に、「異界」にまつわるさまざまなジャンルの資料を楽しむことができます。「異界」ワールドへどうぞ!
そもそも、「異界」とは?
「異界」とは、読んで字のごとく、「自分たちのいるところとは異なる世界」のことです。1970〜80年代にかけて広く用いられた言葉だそうです。
おどろおどろしい世界のようでいて、なんだかユーモアもある世界は、大人も子どもも大好きです。「ゲゲゲの鬼太郎」の人気を見てもわかります。 「異界」の代表選手と言えば、天狗や河童でしょうか?
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にらみつけているような眼と高い鼻は、怖いというより、すっとぼけた表情が憎めません。このお面は、福島県の久之浜張子ですが、昭和51年に最後の職人がなくなり、今では途絶えてしまったということです。
5章仕立ての展示で、さまざまな「異界」に迫る!
天狗とともに、みんなに親しまれている「異界」の住人の代表選手は、河童です。とはいえ、河童は、近世以降にあらわれた妖怪だそうです。
水域で起こる事故と古来より信じられている水神や水妖(すいよう)のイメージが習合したと考えられています。
会場風景
いろいろな河童がいます。まるで宇宙人のようなものも!人の想像力のたくましさには恐れ入ります。
5章仕立ての展示を、導線に沿って観て回るもよし、逆行したり、振り返ったりしながら見て回るのも一興です。
あらゆる場面で立ち現れる「異界」
「異界」とは、自分たちのいるところとは異なる世界でありながら、内と外、昼と夜、一年の終わりとはじまりなどものごとの境目から出現します。
節分の鬼は、旧暦では、年の変わり目とされている日に現れます。「異界」とは、遠いところにあるのではなく、自分たちの周りのいたるところに、広がっているのかもしれません。
江戸時代の俳人・画家の与謝蕪村による日本の妖怪絵巻です。サラサラっと描かれたような全8点の妖怪は、とても軽妙で、滑稽さや親しみやすささえ感じます。 「ゲゲゲの鬼太郎」等に通じるものを感じるのは私だけではないと思います。
「蕪村妖怪絵巻」
人々の祈りと願い
科学が多くのものごとを解き明かした現代とは違って、突然襲う災厄や病気を避けるために、昔の人々は、「異界」の力に頼ってきました。
会場風景
絵馬であったり、伏見人形であったり・・・。そこに、多くの人々の切実な祈りと願いを垣間見ることができます。
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今も続く「異界」
科学万能の現代にもかかわらず、この3年間、コロナの蔓延に戦々恐々としてきた私たちです。コロナよけの妖怪「アマビエ」が人気になったのも、今なお、私たちの心に、「異界」を恐れる気持ちがあることを証明したのかもしれません。
そんな今、「異界彷徨」という展示は、ある意味時機にかなった展覧会であったと言えます。 展覧会の最後に、「錦影絵のなかの異界」というアニメーションを見ることができます。アニメの源流ともいわれている錦影絵をお楽しみください。
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[ 取材・撮影・文:atsuko.s / 2023年4月27日 ]
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