華やかなシーズン、クリスマスツリーと“あべのべあ”が迎えてくれる「あべのハルカス美術館」で始まった「アリス ―へんてこりん、へんてこりんな世界―」にやってきました。
あべのハルカス16Fはすっかりクリスマスモード
『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』は誰もが一度は読んだであろう物語で年齢を問わず楽しめる魅力があります。本名チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンがルイス・キャロルのペンネームで発表した『不思議の国のアリス』は知人の娘アリス・リドゥルとその姉妹に即興で語ったお話が元となって1865年に誕生しました。
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが撮影したアリス・リドゥルのポートレートなど
そのころの英国は勢力絶頂期のヴィクトリア朝。物語の中に重要なエッセンスとして潜んでいる時代背景に注目した内容で、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)が「アリス」の文化現象をたどることにスポットをあてた展覧会の世界巡回展です。
産業革命による時代の変化や植民地支配による新しい発見の連続で、様々な革新が進みました。グリニッジ標準時の制定は“時間”による生活の意識を引導し、労働時間⇒収入の増減という観念が生まれ、白うさぎが懐中時計を持って走り、常に時間に追われている表現に表れます。風刺漫画家ジョン・テニエルによる挿絵の貴重な作品や資料からも英国ヴィクトリア朝という時代がよく反映されていることが読み取れます。
鉄道網の発達や天文学、植物学などの新発見は生活を豊かにし、アフタヌーンティーの習慣などもこの頃生まれたものらしく「お茶会」の場面に反映されているのでしょう。ルイス・キャロルの持つ写真技術は非常に高等なものだったようで当時の作品も出展されています。
英国ヴィクトリア朝に発展したドジソンのインスピレーションの源となった世界
そんな中で生まれたアリスの物語は多くの言語に翻訳され、今も世界中で読み継がれています。
アリスの世界はカードゲームやフィギュアに
貴重な初刊行版も展示
会場は新しい世界へと誘っています。うさぎ穴のトンネルに入ってみましょう。
さあ、うさぎ穴に入ってみましょう
アリスの物語はさまざまな形へと発展しました。映画や舞台、アニメーション、デザインや企業広告などストーリーや登場人物のイメージが時代と共鳴し、新たな世界を創造してゆきます。科学、アート、ファッション、音楽はもとより、更なる量子物理学の世界にも研究が進むといいます。
映画ポスターなどの展示風景
ウォルトディズニーのアニメーションや企業広告にも登場
ハートのクイーン、マッドハッターの舞台衣装
人気者のチェシャー猫や狂ったお茶会のインスタレーションも会場を盛り上げます。デフォルメされたファッションのマネキンなども興味深く拝見しました。
チェシャ―猫のインスタレーション
狂ったお茶会のインスタレーション
“へんてこりんな世界”とはどういう意味か悩みましたが、アリスの世界をあらゆる角度から見直してみるとまさに四方八方・3D・4Dへの広がりが見えました。アーティストの創造力は時空を超えて、今ここにもアリスたちが遊びに来てくれているようで嬉しくなります。撮影可能な作品も多く、今後刺激を受けた新しいアーティストが出現するのを待ちたいと思います。
音声ガイドの上戸彩さんの声も展覧会によく似合っていて、ミュージアムショップに並ぶ図録や関連グッズには目移りしてしまいます。
今日はその楽しい気分を持ったまま、あべのハルカスの“フォルマ帝塚山”で大好きなチーズケーキと“私のお茶会”を楽しむことにしました。
豊富な展覧会オリジナルグッズ
私のお茶会
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年12月9日 ]
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