京都国立近代美術館はここ、岡崎の文化地区の一角にあります。真ん前が平安神宮大鳥居です。槇文彦さん建築のスタイリッシュな大型の美術館で、天井が高く白い背景がどんな近代的アートも難なく受け入れているように見えます。
京都東山岡崎は文化芸術が集まる地区
エントランス兼特設ミュージアムショップ
この秋開催の「ルートヴィヒ美術館展」に出かけてみました。 ドイツケルン市が運営する「ルートヴィヒ美術館」はヨーロッパで最大級のポップアートやピカソコレクション、ドイツ近代美術の収集で高く評価されています。大きな特徴は、写真コレクション、そして市民のコレクターによる寄贈を軸に形成していることです。
そのコレクターに焦点をあてた今回の展覧会は“支援者ここにあり!”の感があります。大きな先導役となったのが、ケルンで弁護士として活動していたヨーゼフ・ハウプリヒと、マインツ大学で美術史を学び実業家として成功を収めたペーター・ルートヴィヒとその奥様イレーネ・ルートヴィヒでした。
まずは「ドイツ・モダニズム」をテーマにしたスタート。19~20世紀にかけてのドイツでは新しい芸術家グループ“ブリュッケ”や“青騎士”が誕生し活躍しました。カンディンスキーやパウル・クレーなどの作品が並びます。
ワシリー・カンディンスキー 《白いストローク》1920年 油彩・カンヴァス
ドイツ・モダニズム 展示風景
続いては「ロシア・アヴァンギャルド」と題された章。ロシアでも社会変革が加速し芸術にも革命が起こりました。空間に浮かぶ作品に光と影の陰影がゆらぐ空気感を楽しませてくれます。
ロシア・アバンギャルド 展示風景
第3章は「ピカソとその周辺」。キュビスムを代表するピカソの作品を多く収集し、評価の定まらなかった時代のものもいち早く寄贈公開していました。アーティチョークを武器のように持つ女性像や肖像が描かれたお皿などが展示されています。ジョルジュ・ブラックやアンリ・マティスなどピカソと同時代に活躍した画家たちの作品も並びます。
また、ルートヴィヒ美術館には多くの写真コレクションがあることも大きな特徴で、作品だけでなく写真芸術の歴史を網羅した所蔵内容となっているそうです。新しい写真芸術の手法を開発したマン・レイの作品は興味深く拝見しました。
アンリ・マティス 《静物》 1941年 油彩・カンヴァス
マン・レイ 左《レイヨグラフ》 1927年 リヒトグラフィック 右《ジャン・コクトーの肖像》~に修正
シュルレアリスムからポップ・アートも充実。経済成長の波は現代美術への大きな流れをつくり、大衆文化と芸術の間で揺れながらも今や現代アートの根幹となったポップ・アート作品も多角立体的に私達を魅了します。
ポップ・アートの部屋 展示風景
1900年代後半から現在、未来に向かってゆく芸術美術に対しても先見の明あるコレクションが並びました。
拡張する美術 展示風景
14000点以上に及ぶコレクションは3大陸にある26の公的機関に寄贈寄託され、そのうち12の機関に「ルートヴィヒ」と名前の冠がついているそうです。コレクションを公開してこそ社会還元が遂行され、継続的支援の存在が不可欠だと感じます。町に支援者のいる美術館は幸せです。このような体制を継続してこれからも私達を楽しませてくれるような平和な世界を祈るばかりです。
京都東山は平安の都より長く文化の中心です。京都国立近代美術館の向かい側は京セラ美術館がど~んと構えており、周辺の様々な文化発信基地もここ数年で大きくリニューアルが進みました。何度訪ねても新しい感動がありますのでゆっくり散策されることをお勧めします。新しいレストランも発見しました。ティータイムで一息ついて、さて次へまいりましょう。
「メゾン ドゥ シャルキュトリM」 にてティータイム
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年10月13日 ]
エリアレポーター募集中!
あなたの目線でミュージアムや展覧会をレポートしてみませんか?
→ 詳しくはこちらまで