2012年のデビュー絵本『オオカミがとぶひ』で、彗星のように出版業界に登場したミロコマチコ(1981-)。手がけた絵本は国内外の絵本賞や文芸賞をたて続けに受賞しているほか、大画面にのびのびと生き物を描き、画家としての活躍にも注目が集まっています。
近作・新作を中心とした絵画や絵本原画、書籍の装画や企業とのコラボレーションなども紹介しながら、ミロコマチコの魅力に迫る展覧会が、市原湖畔美術館で開催中です。
市原湖畔美術館「ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ」
展覧会は5章構成。最初は「近作」です。絵本作家として脚光を浴びたミロコマチコですが、ライプペインティングはデビュー前から行っています。
時には音楽家とコラボしながら、延べ50回以上のライブペインティングを実施。ここでは2016-2019年のライブペインティング作品など、絵画の近作が一堂に会します。
1章「近作」
ミロコマチコは書籍の装画や企業とのコラボレーションなど、イラストレーションやアートディレクションも数多く手がけています。
会場には、伊勢丹のショッピングバッグのほか、『万引き家族』の表紙絵などもあります。
2章「装画・アートディレクション」
絵本作家としてデビュー以後、ミロコマチコは1年に約1冊のペースで絵本を発表してきました。
ここでは、第26回ブラティスラヴァ世界絵本原画展で金牌を受賞した『けもののにおいがしてきたぞ』(2016年 岩崎書店)、『まっくらやみのまっくろ』(2017年 小学館)、『ドクルジン』(2019年 亜紀書房)と、3冊の原画を展示。オノマトペの文字が配された会場壁面もユニークです。
中央には3冊の絵本も展示。手にとってご覧ください。
3章「絵本原画」
2016年と2018年にミロコマチコは山形ビエンナーレに参加しています。自然豊かな土地での経験は、ミロコマチコにとって大きなターニングポイントになりました。
《あっちの耳、こっちの目》は、人間と野生動物のそれぞれの視点で綴られた二つの「おはなし」でできた立体絵本。山車のまわりを回りながら読みすすめる作品です。
4章「山形ビエンナーレ」
下のフロアに進み、最後は「新作」。作品の中をくぐり抜けるようなインスタレーションや、やきものの作品、高い壁面の最上部まで架けられた絵画など、さまざまな作品が展示されています。
山形で圧倒的な自然を実感したミロコマチコは、2019年6月に奄美大島に移住。作品も変化し、決まったかたちを持たない、霊性を帯びた不思議ないきものたちが現れるようになりました。
5章「新作」
展覧会の初日には、ライブペインティングも実施。ミロコマチコと数年に亘ってコラボレーションしてきた音楽家のharuka nakamuraの演奏とともに、1時間半にわたってパフォーマンスを行いました。
画布の上にさまざまなイメージを描いては、絵の具を塗り重ねて新たなイメージを作って行く独特の制作スタイルに、満員の観衆が見入っていました。
ライブペインティング中のミロコマチコ
ライブペインティングで描かれた作品
デビューから約10年。独自の世界観で幅広い世代から支持されているミロコマチコ。移り住んだ奄美大島での暮らしから、何を感じ、何が生まれていくのでしょうか。今後の展開にも期待したいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年7月17日 ]