埋蔵文化財を通じて、日本の歴史・文化の魅力発信と、その保護の重要性に関する理解を深めてもらう、恒例の企画展。アイエムでは2012年から毎年紹介しています(2012年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年、2020年、2021年)。
例年開催されている江戸東京博物館が休館中のため、今年は埼玉県立歴史と民俗の博物館で始まりました。
会場の埼玉県立歴史と民俗の博物館
会場冒頭の「我がまちが誇る遺跡」コーナーでは、地域の特性や魅力に目を向けた遺跡として3カ所を紹介しています。
それまで用途が不明だった「双脚輪状文形埴輪」は、和歌山市の岩橋千塚古墳群から出土した人物埴輪によって、冠帽である事が判明しました。被った姿は、なんとなくシャンプーハットを連想させます。
我がまちが誇る遺跡「岩橋千塚古墳群と紀氏の遺跡 ― 石室と埴輪が織り成す紀伊の古墳文化(和歌山県)」 下の2点が「双脚輪状文形埴輪」
メインといえる「新発見考古速報」コーナーには、14の遺跡から発掘された成果が時代順に並びます。
千葉県船橋市の史跡 取掛西貝塚は、縄文時代の貝塚が集まる東京湾東岸でも最古の遺跡です。火を炊いた跡から、4頭のイノシシの頭蓋骨が並ぺられた状態で見つかりました。当時の儀礼を考えるうえで貴重な発見です。
史跡 取掛西貝塚(千葉県船橋市)
福岡県筑前町の東小田峯遺跡は、弥生時代の集落と墳墓の複合遺跡です。「マツリの土器」と思われる大量の丹塗・黒塗土器が発見されました。
さらに、この遺跡からは青銅器鋳型なども見つかっています。内陸部にありながら、沿岸部に匹敵する先進技術を持った青銅器生産地だったということになります。
東小田峯遺跡(福岡県筑前町)
群馬県渋川市の金井下新田遺跡は、6世紀初頭の榛名山噴火でムラがそのままパックされた状態で見つかった、古墳時代の集落遺跡。隣接する金井東遺跡から発見された「甲を着た古墳人」は「発掘された日本列島 2018」展で紹介されました。
この遺跡からも、火砕流で被災した子どもと馬の骨を発見。子どもは首飾りを身に着けていました。
金井下新田遺跡(群馬県渋川市) 右下の赤い台の上にあるのが、子どもは身に着けていた首飾り
青森県八戸市の鹿島沢古墳は、蝦夷のリーダー層が埋葬されたと思われる古墳群です。
北東北から北海道にかけて、飛鳥時代から平安時代初めに作られたこれらの小規模な古墳を「末期古墳」といいます。
鹿島沢古墳(青森県八戸市)
会場ごとに行われる地域展、いつもなら東京展ですが、今回はもちろん埼玉展。埼玉県内には、特別史跡を含めて20カ所以上の国指定史跡があります。
これらの中で、各地域、各時代の遺跡の特徴をよく示している4カ所が紹介されています。
「地域展 埼玉の史跡」
いつもと違う会場という事もあって雰囲気こそ異なりますが、内容は例年どおりの充実ぶりです。埼玉から始まり北海道、宮城、宮崎、奈良と巡回します。会場と会期はこちらです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年6月10日 ]