身近なお菓子の箱や飲料、カップ麺のパッケージを使ってアート作品を制作している、空箱(あきばこ)職人はるきるさん。
学生時代にTwitterで作品を発表して大きな話題となり、今では世界中にファンが広がっています。
初公開となる最新作も含め、空箱職人はるきるさんの作品約60点を紹介する展覧会が、そごう美術館で開催中です。
第1章「Revolution ― 箱が変身 ―」 《PS5のクローストライダー》
はるきるさんは1997年、名古屋生まれ。祖父母がスーパーマーケットを営んでいた事から、子どもの頃からお店にあったチラシや空箱で工作をしていました。
本格的に空箱工作をはじめたのは、大学時代です。初めてSNSで発表した作品が《アルフォートの空飛ぶ船》。空箱を使う独創性と細かな表現でツイートは爆発的に拡散し、今ではTwitterのフォロワー数は48万人を超えています。
第1章「Revolution ― 箱が変身 ―」 《アルフォートの空飛ぶ船》
作品の最大の魅力といえるのが、細部までこだわった表現。会場では実物ならではのクオリティを近寄って楽しむことができます。
絵本作家イラストレーターのおおでゆかこがデザインした森永マリーの限定パッケージは、かわいい女の子の小部屋に変身。ポストや表札まであります。
第2章「Fantasy ― 童話の森 ― 」 《マリーの秘密の部屋》
はるきるさんの活動は企業の目にとまり、数々のコラボレーションも実現しています。
森永ビスケットとリラックマのコラボパッケージには、はるきるさんの作品の折り線と切り取り線が、パッケージの中面に印刷されました。誰でも簡単に制作できます。
第2章「Fantasy ― 童話の森 ― 」 《ムーンライトの灯台》
会場では、はるきるさんの作業部屋も再現されています。
制作に用いる道具は、ハサミやカッターマット、定規など。接着剤は、木工用ボンドでは紙がふやけてしまうので、「スチロールのり」「クラフトのり」など水分を含まない樹脂系の接着剤を使っています。
第3章「Origin ― はるきる ― 」 「はるきるルーム」で作業する、空箱職人はるきるさん
はるきるさんの代名詞といえるのが《プリングルズの紳士たち》。緑、赤、青、紫、黄色に、それぞれ、リーダー、イケイケ、クール、変わり者、おちゃめと、キャラクターを設定。指先までポーズをつけて表現しました。
はるきるさんは制作の過程で設計図は作らず、頭の中での構想をそのまま形にします。商品や箱が持つ世界観を崩さないようにするこだわりも持っています。
第3章「Origin ― はるきる ― 」 《プリングルズの紳士たち》
《チョコパイの街かど》は、ロッテのチョコパイの空箱を利用した作品。2019年のリニューアルバージョンのパッケージを使いました。
パッケージのクラシカルな雰囲気から、ヨーロッパの映画のようなシーンを連想。木は箱の裏側を、川の水は個包装の銀色の紙を使っています。
第4章「Nostalgia ― 夢見た景色 ― 」 《チョコパイの街かど》
カップヌードルは発売50周年を記念して「カレー&シーフード」など、これまでの商品をミックスした4種を発売。はるきるさんもこれに倣い、組み合わせと同じ2つのカップヌードルのパッケージを使って、4体の「融合戦士」をつくりました。
なお、カップヌードルの容器の内側は接着剤をはじくため、表面に傷をつけて接着剤を浸透させるなど、さまざまな工夫が必要でした。
第5章「Hero ― 新ヒーロー誕生 ― 」 《カップヌードルの融合戦士》
世界100カ国以上で親しまれているオレオを使った作品は、箱の色から空をイメージして戦闘機を制作。
OREOの文字は翼に、赤い三角形は尾翼に、クッキーはコックピットの窓やエンジンの排気口にしています。
第6章「Universe ― 空の彼方へ ― 」 《オレオの戦闘機》
展覧会のもうひとつのテーマといえるのが、SDGs。捨てられる運命だった空箱が、多くの人々を魅了するアートに生まれ変わるさまは、サステナブルの観点も含めて注目を集めています。
会場最後にはサステナブルとSDGsについての解説パネルもありました。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2022年4月26日 ]