江戸時代を華やかに彩った“琳派”の絵師たち。その作品に魅了される方も多いと思います。17世紀の京都で活躍した俵屋宗達を皮切りに、その画風は江戸へと流布し、19世紀には酒井抱一、鈴木其一など日本美を象徴する一大系譜となり400年の時の流れと共に続きます。
今回は少し角度を変えながら琳派のスピリットを継承した神坂雪佳(かみさかせっか1866-1942)にスポットをあてた展覧会に出かけました。
近代京都で活躍した神坂雪佳
神坂雪佳は、琳派の作風や活動に共感し、近代京都で図案家・画家として活躍しました。
光悦村図(部分)神坂雪佳 個人蔵
琳派の大きな特徴である華やかな色彩と大胆な画面構成。杜若(かきつばた)をはじめとする季節の草花はその代表的テーマとして用いられ、さらに絵画をにじませる「たらし込み」という琳派の技法が目をひきます。
杜若図屛風 神坂雪佳 個人蔵 など展示風景
金魚玉図(部分) 神坂雪佳 細見美術館蔵
十二ヶ月草花図より 神坂雪佳 細見美術館蔵
雪佳自身が琳派のコレクターでもあり、多くの作品を身近においていたようで、陶芸や漆芸などの図案として作風に取り入れながら独自の才能を発揮しました。
扇子や団扇にもデザインは及ぶ
京都という場所は多様な伝統技術が根付いた地盤があり、雪佳が琳派スピリットを継承するのは必然だったかもしれません。華やかなセンスで日々の生活を彩る調度品を生み出すための図案は、陶芸家などとのコラボにより更に美しく展開していきました。代表作として知られる木版多色摺りによる図案集『百々世草』(ももよぐさ)の出展もあり(頁替あり)、色彩の美しさやアイデアの豊富さに目を奪われます。
陶磁器図案(部分)と菊花透し彫鉢 神坂雪佳 図案 河村蜻山 作
『百々世草』より 神坂雪佳 細見美術館蔵
生み出された図案は人気を博し、雑誌の表紙や百貨店の頒布物などにも採用され、多くの人々に愛されました。時代や地域を超えて愛される琳派の魅力を備えた雪佳の継承スピリットは、現代のクリエイターへの刺激ともなっているのでは? さて、次に飛び出すのは誰なのでしょう? 楽しみです。
図案は多種多様なものに採用
もちろん江戸時代の琳派作品も鑑賞できます。俵屋宗達の下絵に本阿弥光悦が和歌を書した作品や、中村芳中によって描かれた可愛い犬たち、酒井抱一の絵なども見逃せません。
『光琳画譜』中村芳中 個人蔵
忍草下絵和歌巻断簡 本阿弥光悦 書 俵屋宗達 下絵(前期展示)細見美術館蔵
金魚玉図グッズがかわいい
最近、系譜をたどった展覧会に注目が集まります。浮世絵の月岡芳年など世界中にファンがいて、まさに現代にも受け入れられているものです。大きな画風を継承することの難しさと新しいチャレンジについて考えさせられます。
今回訪れた細見美術館は先頭を切って琳派作品をコレクションしていました。“琳派展22”が示すように優品の蒐集から新しいブームの発掘まで琳派研究の担い手でもあります。私も中村芳中や神坂雪佳を知るきっかけを貰った美術館です。
京都岡崎文化エリアを縫うように散策しながら、今日は新しくOPENしたホテルオークラ京都 岡崎別邸に立ち寄ってみました。表通りからは少し入りにくい気品を感じますが、1Fのラウンジは誰でも利用できます。隣接する岡崎神社や金戒光明寺など寺社参拝の途中、一息入れるのには素敵なスポットです。
寛ぎのティータイム
金魚恋しい季節到来、肩肘張らない琳派の鑑賞はいかがでしょうか?
[ 取材・撮影・文:ひろりん / 2022年4月22日 ]
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