岐阜県美術館で「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記」が始まりました。初めて聞く作家ですが、愛嬌のある動物や植物で埋め尽くされたポスターに興味を惹かれ、見に行くことにしました。
岐阜県美術館 「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス」ポスター
展覧会の見どころ
塔本シスコは、熊本県出身、独学で50代から本格的に絵を描き始めた女性です。 作品には、身の回りの人々や、景色、想い出などが素朴な筆遣いで、あふれるほどに描かれています。
展覧会は、第1章《「私も大きな絵ば描きたかった」パラダイスへの第一歩》から第7章《「シスコは絵をかく事シかデキナイのデ困つた物です」かかずにはいられない!》で構成され、展示点数は200点を超えます!
会場入口の自動ドアが開くと、左側のすぐ近くに着物を着たマネキンが見えます。
会場風景 左 《つゆ草》1985年頃 個人蔵、《インコ》1988年頃 個人蔵
《淡路島 石をとるシスコ》の画面に奇妙な凹凸があるので、よく見たら、砂浜の部分に貝殻が張り付けてあります。小さな作品ですが、見ていると、水辺で石をとる作家の手の感触が伝わってくるようです。
会場風景 右《淡路島 石をとるシスコ》1988 個人蔵
《ウマイレガワ》の画面には、4頭の馬が描かれています。はじめは4頭の馬がバシャバシャと水浴びしている場面だと思いました。説明を聞くと、水浴びしている馬は1頭だけで、連続写真のように移動する馬を連続して描くことで、動感を表現しているのだそうです。
話の後、もう一度画面を見ると、画面上部の4人の子供も実は2人なのかもしれないという気がしてきます。
会場風景 中央《ウマイレガワ》2001 個人蔵
絵画だけでなく、人形もたくさん制作したようです。これらの人形を作家はどのように自宅に飾っていたのかなと思います。
会場風景
各章のタイトルは、熊本弁の作家の言葉から引用されています。例えば、第2章「どがんねぇ、よかでしょうが」とか、第3章「ムツゴロウが潮に乗って跳んでさるく」など、読むだけでなく、小さな声でつぶやくと音感が楽しいです。
どの作品も画面の密度が高いです。そのためか、《金魚 大和錦の産卵》を見ていても、涼しさと一緒に熱気のようなものを感じます。
会場風景 左《金魚 大和錦の産卵》1992 個人蔵
《ミアのケッコンシキ》を中心に家族の肖像画が白いフレームで囲まれ、まるで一つの作品のように見えます。岐阜県美術館独自の展示の工夫だそうです。
会場風景 中央《ミアのケッコンシキ》1997 個人蔵
ドローイングの《フリカエルカワウソ》は、本展担当者のお気に入りの作品だそうです。ドローイングですが、背景まで描かれ、カワウソのびっくりした表情がユーモラスです。
会場風景 左上《フリカエルカワウソ》2001 個人蔵
ここまで、200点以上を見てきて、とても楽しい展覧会でした。 また、作家のエネルギーと、その作品を保存してきた家族の方のエネルギーには本当に感心します。
会場風景
最後に、本展担当者から「シスコさんの創作に触れたみなさんには、幸せになってほしいです」とメッセージをいただきました。
なお、本展では、「ナイトギャラリートーク」、「お孫さんにシスコのことをきく」など様々な関連プログラムが予定されています。(詳しくは、岐阜県美術館HP参照)
また、同時開催の所蔵品展では、キシオ・ムラタやラリッサ・サンスールも特集されています。ラリッサ・サンスールの映像作品は、3本で合計1時間6分です。 「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス」とあわせ、「美とふれあい、美と会話し、美を楽しむ」時間を、岐阜県美術館で過ごしてはいかがでしょうか。
[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2022年4月24日 ]
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